11号 2000年11月  8020運動 

 

 

 

 11月8日って何の日かご存知ですか? 答えは「いい歯の日」です。

私が属する当時の南安曇郡歯科医師会(現:安曇野市歯科医師会)では、2000年11月11日、豊科町保健センターにて、8020をめざした いい歯の日のイベントを行い、その後も毎年このイベントを行っています。

 

8020運動

 8020(ハチマルニイマル)運動とは、平成元年(1989年)に厚生省(当時)の成人歯科保健対策検討会のなかで提唱された「80歳になっても自分自身の歯を20本以上保つことを目標とする歯の健康づくりのスローガン」です。

 現在1人平均の永久歯は、60歳で約18本、70歳で約12本、80歳以上では約3本と年齢を重ねるにつれて減少しており、高齢者における健康な生活の確保に大きな支障を生じています。

 日本人の平均寿命である80歳に至るまで、20本の歯があれば食生活にほぼ満足できるといわれることから、生涯、自分ので食べる楽しみを味わえるようにとのことでこの運動は生まれました。

 2006年5月8日、国民健康・栄養調査の結果が厚生労働省より公表されました。

 その調査結果によると、「歯の本数と噛んで食べる時の状況」では、男性の40〜49歳で20本以上の歯を有する人のうち、88,2%が「なんでも噛んで食べることができる」と回答したのに対して、19本以下の人では48,8%と5割にも満たないのです。70歳以上でも、歯が20本以上の人は76,8%、19本以下の人では44,6%でした。女性でも年齢層に関係なく、歯が20本以上の人が「なんでも噛んで食べることができる」と回答した割合が高かったのです。

 

 

 

命を狙う口のなかの細菌

 

 歯がある場合、人の口のなかには300種を超える細菌が数千億も住み着いています。口のなかの清掃状態が悪いと、それが1兆個近くになってしまい、歯だけでなく全身の健康を脅かし続けています。

 口のなかの細菌、特に歯周炎(歯槽膿漏)の原因の細菌は、非常に付着する(へばりつく)能力が強く、心臓弁膜などにもへばりついて増殖します。特に、川崎病になった人、母親のおなかの中にいたときに、母親が風疹やウイルスに感染したために心臓弁膜に障害がみられる人では、口のなかの細菌が、しばしば細菌性心内膜炎を起こしてしまいます。歯周炎の進行した人は、心臓の病気が原因による死亡が1.9倍、心筋梗塞の発作が2.8倍多いという驚くべき調査があります。

肺炎は、わが国では死亡原因の第4番目で、65歳以上の高齢者に限ってみると、トップを占める感染症であります。口のなかやのどの細菌が知らぬ間に、唾液や食物・胃液とともに気管に入り「誤嚥(ごえん)性肺炎」を起こすのです。夜間就寝中は、特に高齢者や寝たきりの人は、口のなかのものを飲み込む反射(嚥下反射)が低下しており、さらにもし気管へ誤って飲み込むこと(誤嚥)があっても、咳として排出する反射(咳反射)も低下しているからです。気管支や肺にまで運ばれた細菌は、通常は肺に存在する細菌によって食べられて殺されます。

ところが、高齢者や寝たきりの人では、感染防御が低下してしまっているため肺に到達した細菌は増殖して肺炎を起こしてしまうのです。体力や免疫力が衰えてくると、元気なときには何でもなかった口のなかの細菌が致命症となります。

このほかにも、口のなかの細菌によって、扁桃腺炎、糸球体腎炎、リウマチ性関節炎、早産や未熟児といった妊娠トラブルを起こすといわれています。

 これらを防止するためには、口のなかの細菌数を減らすこと、つまりブラッシングが重要です。

 

 

健康日本21

 「すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会」の実現をめざすのが、「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」です。

 その実現のためには、発病を予防する「一次予防」に重点を置く対策がきわめて重要になっています。そして、個人の力と併せて、社会全体が健康づくりを支援していくことが重要で、「健康日本21」では、健康寿命の延伸に向け、2010年をめざして具体的な目標を提示しています。下のグラフは、2010年までの歯の健康目標値です。家族みんなで実行に移しましょう。

 

 

 

 

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