第28号 2002年4月 飲み物 「フキゲン」「ラクダ」「ダカラ」、これらが何の名前かご存じですか? 「フキゲン」は「やーなことリセット乳性炭酸飲料」、「RAKUDA」は「ローヤルゼリーでゆったり&カリウムですっきり」、「DAKARA」は「カラダ・バランス飲料」、つまり飲み物の名前です。 飲み物の消費量は年間を通じて一定ではなく、3月より徐々に増加し、7・8月がピーク、11月が最も少なくなります。 多様化した飲み物 昔、清涼飲料といえば、サイダー・ラムネなどに代表される炭酸飲料が中心でした。しかし、現在は炭酸飲料を始め、果実系飲料、野菜系飲料、コーヒー・紅茶系飲料、牛乳・乳系飲料、茶系飲料、カルシウムや鉄分などのいわゆる機能性飲料、スポーツ系飲料、栄養系飲料(なかには まずい というイメージにいかにも健康を意識させるものも)などさまざまで、ついには、日本では古来より無料であったはずの水も、ミネラルウォーターとして商品になっています。 しかもほとんどの飲み物は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアーだけでなく、人が集中しない場所でも、数分歩けば自動販売機にて購入することができます。 このように飲み物の種類が多くなり、それぞれの人々の好みに合った商品が、しかも手軽に選ぶことができるようになると、より生活をエンジョイすることができます。しかし、商品の種類が多くなれば多くなるほど、それを選ぶ人の価値観、考え方、ライフスタイルなどが大きく影響するのではないかと思われます。 水分必要量 私たち成人の体の約60%は水分です。そのため、1日2,500mlの水分を補う必要があります。ところが、こどもにとっての水分は非常に大切なもので、体重1kgあたりの必要量が、成人の2〜3倍となります。特に、乳児期の体は体重の約70〜80%が水分でしめられているため、体重1kgあたり1日に150mlの水分が必要な時期なのです。仮に体重60kgの成人に換算すると9,000ml、なんと1升瓶5本分です。 このように、こどもは年齢が低いほど体の水分量が多く、また必要な水分量も多いのです。乳児期は「水が欲しい、喉が渇いた」とは言えないので、母親は十分な注意が必要となります。 最初の飲み物 出産にあたり特別な問題のない新生児が、初めて口にする食物は母乳か人工乳です。乳児期前半は、この母乳または人工乳がこどもにとっての唯一の栄養源であり、同時に水分補給源でもあります。この時期に、これら以外のものを口にするとしたら白湯以外はないのです。 生後4ヶ月を過ぎると、母乳・人工乳以外の味に慣らすために、薄めた果汁やスープを与え、5ヶ月を過ぎる頃から離乳食を与え始めますが、必ず薄味にすることが大切です。この頃から味の強いものを与えてしまうと、まだ味覚が形成されていないため、濃い味しか受け付けなくなり、麦茶などの薄味のものはほとんど飲んでくれなくなります。 生後12ヶ月で断乳を目指し、離乳期以降も、牛乳が栄養摂取や水分補給に果たす役割は大きいのですが、徐々に栄養の主体は固形食に、そして単なる水分補給は水や緑茶、麦茶などに移行していきます。この時期に、牛乳や水を飲んでくれないからと、栄養的な面から牛乳の代わりに乳酸系飲料を、水分補給の面から水の代わりにスポーツ系飲料を、しかも哺乳びんで与えると、前歯がとけたようなひどいむし歯である「哺乳びんむし歯」になってしまうので注意しましょう。 糖分量 むし歯を考えると、飲み物中の糖質量を考えなければいけません。1日あたりの糖質の必要量は、成人で20〜40g、体重1kgあたり約0,5gといわれています。ただし、これは砂糖の必要量ではありません。砂糖となれば必要量は0gであり、体内に入ってから糖化される食品も含めての数値です。 最近の飲み物で特に気になるのが、機能性飲料とスポーツ系飲料、それに野菜系飲料です。これらの商品を、一般のジュースや清涼飲料と比較し、それよりは良いと考えたり、体自身に良い飲み物と考えがちですが、実際には他の清涼飲料と同程度の砂糖が入っていることが多いのです。また、特に表示のない果汁100%の飲み物にも、他の清涼飲料と同程度の砂糖が、防腐剤の代わりに入っていることがあります。
ペットボトル症候群 1992年、大槻一博内科医らが、1,5Lペットボトルの清涼飲料水を大量に飲む習慣から発症する糖尿病性ケトアシドーシスに対して、「ペットボトル症候群」という病名をつけました。別名「清涼飲料水ケトーシス」とも呼ばれます。 糖分を多く含む清涼飲料水を連日摂取する習慣がつくと、糖分の大量摂取により急激にインスリンの作用が低下するため、糖分をエネルギーとして利用できなくなります。その代わりに脂肪が代謝され、脂肪の分解の過程でケトン体が多量に産生されます(ケトーシス)。ケトン体の蓄積によりアシドーシスをきたすと、体内の電解質バランスが障害され(低ナトリウム血症、低カリウム血症)、高血糖と相まって意識障害が生じ昏睡に陥ってしまうのです。 炭酸飲料は炭酸や酸味により飲みやすいこと、糖度が10%前後と非常に多いことで、糖尿病およびペットボトル症候群の発症につながります。しかし、コマーシャルの影響で健康的な飲み物という誤ったイメージが強い機能性飲料、スポーツ系飲料、野菜系飲料も、糖度が炭酸飲料と同等か約2/3と決して低くないので、習慣的摂取でペットボトル症候群の発症につながる恐れがあります。糖質は、人間が生きていくためのエネルギー源として、重要な役割をしています。小児科医が、下痢や脱水などで水分摂取量が少ないこどもにスポーツ系飲料を勧めることもありますが、健康なこどものからだには、スポーツ系飲料の糖分や塩分は余分なだけです。砂糖を多く含んだ甘い清涼飲料は、むし歯の原因にもなるだけでなく、こどもの食欲を失わせてしまい、タンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルなどの供給源となるおかずを食べる量が減る原因にもなります。そして、おかずは食べずに、口当たりがよいお菓子は食べようとします。こどもが、毎日甘い清涼飲料を飲むとすれば、明らかにそれは砂糖のとりすぎといえるでしょう。 |
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