33号 2002年9月 粘液嚢胞

 

 嚢胞(のうほう)とは、液体またはガスのつまった異常な空洞のことで、粘液嚢胞(ねんえきのうほう)とは、唾液腺からの唾液の流出が障害されて、周囲の組織に唾液がたまり、粘膜に腫れや膨らみを作ったもので、口の中の粘膜にみられる嚢胞としては最も頻度が高いものです。

 

症状

 

発生部位:最も多いのは下唇で、や口腔底(こうくうてい:舌の下の部位)、頬粘膜(きょうねんまく:頬の内側の粘膜)にも発生します。最も多い下唇では、中心部分よりもやや脇よりによくできます。

舌の先端の下面の、前舌腺という小唾液腺由来のものは、ブランダンヌーン嚢胞といいます。これは、前舌腺のことを、フランスの外科医であったブランダンにちなんでブランダン腺とも、ドイツの解剖学者であったヌーンにちなんでヌーン腺とも呼ばれているからです。

口腔底の舌下腺由来のものはガマ腫と呼ばれています。ガマ腫は、一般的には右側または左側の片側だけにできますが、舌の付け根の部分が腫れて、舌が押し上げられて、外から見るとガマガエルののどによく似ていることからその名がついたようです。ひどくなると、押し上げられた舌は動かせないほどになります。

年齢:10歳代から20歳代に多いとされています。

所見:典型的な粘液嚢胞は、粘膜のすぐ下にできるため、柔らかい半球状の膨らみとして発生し、透き通った淡い青紫色をしています。やや深い部位にできたものは、粘膜表面が正常な粘膜の色でなだらかな膨らみながら、触ると内部に球形の柔らかい膨らみをふれることができます。自分でつぶしたりして、できたりつぶれたりを繰り返したものでは、表面が白濁したり硬くなってきます。

 

原因

  粘液嚢胞は、唾液腺からの唾液の流出が障害されて、周囲の組織に唾液がたまった結果できるものなので、誤って噛んでしまったり、とがったむし歯や歯並びが悪いこと、歯の生え代わり、歯列矯正装置によるケガが原因と考えられています。

 こどもの場合は、を噛む癖やつめを噛む癖、ゆびしゃぶりなどの悪い癖も原因になる可能性があります。

 

治療法

 原則的には、嚢胞周囲の小唾液腺も含めて摘出する必要がありますが、嚢胞を形づくる嚢胞壁が非常に薄く、きれいに摘出することが困難なため、小さなものは周囲組織を含めて切除することが多いです。

 ガマ腫の場合も、原則的には舌下腺を含めた摘出術がよいのですが、全体が大きいため全てを摘出するのが困難な場合もあります。そのような場合は、嚢胞壁の一部を広く切除し、嚢胞を口のなかに開放することで、唾液がたまるのを防ぐ手術:開窓術を行うこともあります。

  この他にも、凍結療法や薬物療法、レーザーによる手術方法もあるようです。

 

予後

 注意深く摘出術を行っても、小唾液腺を傷つけることがあるので、再発することがあります。

開窓術の場合は嚢胞壁が残っており、もともと摘出することが困難なほど大きな嚢胞で行われるため、摘出術よりも予後は悪いです。

 また、原因が改善されないかぎり、再発する可能性は高いです。

 

 

 

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