第32号 2002年8月 おやつ 私がこどもの頃、夏の大好きなおやつといったら“スイカ”。一人で、毎日1/4玉は食べていました。それが良いか悪いかは別として、今回は、前号でも少し取り上げた「おやつ」についてです。 こどもの心をはぐくむ
おやつは、こどもにとって最大の楽しみで、むしろ食事よりもおやつへの期待が大きいことも少なくありません。母親の手作りによる、素朴な味のおやつで育ってきた私たちのこども時代に比べて、現代っ子は、自動販売機でジュースなどの飲み物を自由に手に入れ、スーパーやコンビニで、色とりどりのスナック菓子などがいっぱい、まさに恵まれた時代です。 しかし、こどもに与えるおやつは、食事の仲間、栄養補給といった栄養的意味合いも大切ですが、もっと楽しいもの、思い出となるもの、母親の愛情や家庭の暖かさを伝える、心の贈り物といった立場からも考えていきたいものです。 栄養的意義 こどもは伸び盛りですし、毎日元気いっぱい遊びまわっているので、からだの小さい割に、多くのエネルギーや栄養素が必要となります。栄養所要量をみても、こどもは体の小さい割に体表面積が大きく、エネルギー消費量も多く、また成長発育に伴う組織新生のためにも、栄養要求量は高いのです。 それにひきかえ、消化機能は十分発達せず胃の容積が小さく、3度の食事だけで栄養所要量を満たすのは困難で、おやつを食事の一部として与える必要があります。また、幼児期は新陳代謝が活発で水分要求量も大きく、おやつを与える際に、飲み物などで水分補給をしてやることも必要です。 このように、幼児にとっておやつの必要性は高いのですが、一方では、不適当なおやつやおやつのとりすぎ、不規則な与え方をすると、こどもの健康を害することになります。 与え方 幼児にとって、おやつは食事の一部として重要ですが、1日のエネルギー所要量の20%程度をおやつから摂取するのが目安とされています。これは次の食事のさまたげとならない程度で、しかもある程度、満腹感を与えることのできる量です。 しかし最近のこどもは、おやつのとりすぎ、特に甘いものの過食傾向がみられます。特に少食のこどもは、1回量がたとえ少なくても何回も与えていることから、食欲不振をきたしていることが多いです。また、甘いものを食事前にとると食欲を失い、十分な栄養がとれなくなります。おやつの回数は、3歳未満児では午前・午後の2回、3歳以上児では午後1回というのが普通で、次の食事時間との間に、1,5〜2時間の間隔がない場合は、ごく軽いおやつにするなど加減して与えましょう。 また、おやつは時間を決めて与えること。特に2〜3歳くらいのこどもでは、遊び食い・だらだら食いにならないよう、1回のおやつ時間が20〜30分以内で区切りをつけるようにしたいものです。 おやつの回数や時間の不規則は食欲不振を招き、栄養のアンバランスの原因にもなり、健全な食習慣の育成をさまたげることになるので注意しましょう。 種類 おやつとして望ましいものは、適当にかさがあって消化のよいものと、牛乳とか麦茶など水分の補給できるものとを組み合わせた与え方です。 よいおやつの条件は、 @
消化がよく、胃内にとどまる時間の短いもの A
容積が大きく、満腹感を与えるもの B
牛乳・麦茶のように水分補給のできるもの C
果物・野菜のように水分が多く、ビタミン・ミネラルの多いもの D
次の食事のさまたげにならないもの(タンパク質・脂肪の多すぎる食品はほどほどに) E
甘味の強くないもの(甘すぎる菓子・あめ・もち菓子は避けたい) 菓子類の与え方
スナック菓子の栄養価は下記のとおりですが、いずれも高脂肪で、糖質も60〜69%と高く、このため100gあたり500kcalと高エネルギーです。食塩量も1,0〜1,9gとかなり高いので、与える際は適量を考えて与え、袋ごと与えるようなことは避けましょう。 また、脂肪分が100g中10%以上ある食品は、時間がたつと油脂の酸化で過酸化脂質などができ、悪臭を発したり健康にも悪いので、消費期限や賞味期間など見て購入するようにしましょう。 スナック菓子の栄養価(100gあたり)
心をこめた手作りおやつ
こどものおやつは、食事の一部といった栄養的意味のほか、心理面、情緒面に及ぼす影響は大きいものがあるので、もっと楽しいもの、思い出に残るものにしたいものです。そのためにも、時々は手作りおやつを与えるようにしましょう。ドーナツやクッキー、おだんごなどを作ったり、ふかしいもや市販品に少し手を加えて手作り風にするだけでも、意外にこどもたちに喜ばれるでしょう。 市販品ばかり与えているお母さんは、こどもが欲しがるだけ与えることが多いのですが、手作りおやつを与えるお母さんは、おやつの時間や量を決めて与えていることが多いようです。手作りおやつを与える心は、おやつの与え方にも望ましい結果となって表れているようです。 しつけ
おやつを与える際には、しつけ面から次の点に注意しましょう。 親の注意のゆきとどかない買い食い、こどもが一人でお菓子を持ち出して食べること、夕食後のおやつなどは、一度味をしめるとなかなかやめられないので、初めから悪い癖をつけないようにしましょう。 また、おやつの名前を教えたり、どんなおやつが良いのか与えるおやつを通して教えたり、おやつは時間と量を決めて食べることの大切さ、おやつの前の手洗い、食べた後の歯みがきや口ゆすぎの大切さなどを身につけさせてあげましょう。 こどもは菓子やジュースなどが大好きですが、要求すればすぐ与えるのも問題で、こどもの欲望を統制する能力が養われません。おやつをもっと、こどもの心をはぐくみ、健全育成といった視点から、その意義と役割を見直してみたいものですね。 |
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