44号 2003年8月 白板症・口腔扁平苔癬

 

白板症(はくばんしょう)・口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)は、ともに白色の斑点状で、将来口腔癌(こうくうがん)になる可能性のある、前癌病変(ぜんがんびょうへん)と呼ばれています。

 

 

白板症

 

白板症とは、お口の中の粘膜が白色の斑点状ないし板状になっている病気の総称です。口腔カンジダ症も白い斑点状になりますが、口腔カンジダ症と違ってガーゼで拭っても取り除くことはできません。なぜなら、白くなるのはお口の中の粘膜の上皮部分が角化(かくか)するからです。角化とは、粘膜が皮膚のように変化しガサガサになるような状態で、まるで足の裏の硬い部分のように厚くなった状態になることです。

40歳以上の中高年齢層に多く、女性より男性に多く見られます。頬の内側の粘膜や歯肉(しにく:歯ぐき)、にできやすいようです。

明らかな原因はわかっていませんが、粘膜にが常にあたっていたり、誤って噛んでしまう癖があったり、タバコやアルコールによる刺激、ビタミンAの欠乏などが考えられています。

 

 

口腔扁平苔癬

扁平苔癬は扁平紅色苔癬ともいわれ、皮膚とお口の中の粘膜における慢性の角化異常を伴う病気です。お口の中の粘膜に見られる扁平苔癬は、幅1〜2mmの白い細かい線状で、レース状や網目状になっていることが多く、ほとんどが頬の内側の粘膜に見られ、左右対称にできることも多いです。皮膚に見られる扁平苔癬は、スミレ色の小さなふくらみとなっています。

 やはり40歳以上の中高年齢層に多いですが、白板症と違って男性より女性に多く見られます。

これまた明らかな原因はわかっていませんが、細菌やウィルスによる感染、歯科用金属アレルギー、ストレスなどが考えられています。

 

 

前癌病変

 前癌病変とは、腫瘍(しゅよう)と呼ばれるできものではないものの、癌化する恐れがある癌の前段階の過程にあると見られる病変をさします。胃腸にみられるポリープや、皮膚における色素性乾皮症、肝硬変などが含まれます。症状がない場合でも、細胞の形が変化しているような病的な状態で、警戒する必要があります。

 白板症は重要な前癌病変と考えられています。それは、実際に口腔癌に変化していったり、口腔癌の患者さんの中に白板症を伴っている方が少なくないからです。癌化率は5〜15%と考えられています。

 口腔扁平苔癬も、口腔癌の前癌病変のひとつにあげられていますが、癌化率はかなり低く、前癌病変ではないとする意見もでています。

 

 

治療法

まず、原因と考えられるものを取り除く必要があります。あたっていると思われるとがった歯を丸めたり、むし歯や合っていないかぶせ物の治療、合っていない入れ歯の調整、お口の中を清潔に保つこと、禁煙・禁酒、ビタミンAの投与、口腔扁平苔癬の場合はステロイド軟膏の塗布、歯科用金属アレルギーの検査をする場合もあります。

前癌病変とはいえ、必ず癌化するものではありませんので、特に症状がなければ定期検診を怠らなければ良いともいえます。しかし小さなものは、液体窒素を押しあてて、角化した細胞を瞬間的に凍らせて殺し、周囲からの健康な細胞をよみがえらせる「凍結療法」や、レーザー治療で割と簡単に切除できますので、病院の口腔外科を受診してください。なおある程度大きなものは、一般の口腔外科切除手術の対象となります。

 

 

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