52号 2004年4月 歯内歯

 

歯内歯(しないし)は、別名、陥入歯、重積歯ともいいます。

 

由来

 は、口のなかに見えている部分を歯冠(しかん)といいますが、その構造は、表面が人のからだの中で最も硬い部分であるエナメル質、その内側がエナメル質よりもやわらかく、黄色っぽくて弾力がある象牙質(ぞうげしつ)、歯の芯には血管や神経の通った歯髄(しずい)となっています。

 

よく発達した歯内歯は、レントゲン写真で1本の歯の歯髄の内側に、もう1本の小さい歯が入っているように見えることからこの名がつきました。最初は、外側の歯と内側の歯が別の歯であると思われていたのです。

 

しかし現在では、歯冠部のエナメル質と象牙質の一部が、歯髄の内側に深く陥入し、積み重なっている状態であることがわかってきました。つまり、別と思われていた内側の歯は、外側の歯の一部であり、1本の形態異常の歯であることが明らかになったのです。そういう意味では、陥入歯や重積歯という名の方が正しいのかもしれません。

 

 

発育異常

 歯内歯の出現率は1%未満ときわめてまれですが、上の歯にみられることがほとんどで、しかも前歯である側切歯そくせっし)が圧倒的に多く、ついで第三大臼歯(親知らず)や、余分な歯:過剰歯にみられます。

 あごの中で歯が作られる時期に問題が生じ、エナメル質の元になる組織の一部が、歯の内側に向かって異常増殖したものと考えられていますが、原因はよくわかっていません。

 歯冠部のエナメル質と象牙質の一部が、歯髄の内側に深く陥入しているという形態異常ばかりでなく、内側に陥入しているエナメル質は、外側のエナメル質に比べて石灰化が弱い、つまり質も悪く、脆いことがわかっています。

 

 

治療の必要性

 歯内歯は、歯冠部の一部が陥入しているため汚れが溜まりやすく、しかもエナメル質の質が悪く脆いため、むし歯になりやすいです。そこへきて、その陥入が歯髄の内側まで達していると、すぐに歯髄までむし歯が進行してしまい、歯髄の処置が必要になります。

 しかし、通常の歯でさえ歯髄の処置は複雑なのに、1本の形態異常の歯である歯内歯はさらに困難を伴い、不完全な処置となってしまうことも少なくありません。

 もしその陥入が、あごの骨のなかに埋もれていて口のなかには見えない歯の部分:歯根(しこん)の1/3以上にまで達していれば、抜歯せざるをえないでしょう。

 

 

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