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元治1年3月30日(1864年5月5日)
【京】総督・指揮:慶喜、旧参与諸侯(春嶽・宗城・久光)に呼びかけ
越前藩邸で摂海砲台築造の諸侯負担について議す
【京】春嶽の守護職辞任:宗城、慶喜に対し、春嶽の辞職後は
急変ある際の上京が適切と主張。慶喜、同意。

☆京都のお天気:晴天(久光の日記より)
■旧参豫諸侯の集会

【京】元治元年3月30日、禁裏守衛総督・摂海防御指揮の一橋慶喜の呼びかけにより、越前藩邸で旧参豫諸侯の集会が行われ、摂海の砲台築造の諸侯負担及び春嶽の守護職辞表後の役職について話し合われました。

●摂海防御(砲台築造の諸侯負担)について

宗城の日記によれば、結論は以下の通り。
(1) 15箇所に合計800門の砲台を築造する
(2) 但し、15藩が「永久請持」を担当し、砲台の大小に往時、各藩に割り当てる。「築造請持費用」は官が支給する。
(3) 割当ては幕府が命じる。
(4) 必要な費用は幕府からは半分程度は出すが、1月27日の宸翰(こちら)に「全国の力ヲ以て」とある通り、「貧富ヲ不論、高割差出」すよう命じ、「富有商人」にも命じるべきである。ただ、この点は未決である。

また、越前藩の記録によれば、やりとりはこんな感じでした。
慶喜 摂海の砲台はその経費が非常に多額となり、幕府のみの出金では到底行き届き難い。ついては諸大名に賦課し、築造も諸家に命じてはどうだろう?
久光 諸侯の石高に応じて賦課されるのは余儀なきことでしょう。築造を諸家に命ずる件も御尤もとは存じますが、これは砲台に大小の差があり、諸侯の資力にも差がありますから、その適度は予め御答え申し難いことです。この点は、幕府にて「精密御調査の上」、命じられるのがよいでしょう。
慶喜 (春嶽・宗城の意見も尋ねる)

春嶽・宗城
(久光の意見に同じで、幕府の評議次第であると回答)
慶喜 (春嶽に対し)砲台に据付ける大砲は外国で鋳造させるべきか、国内で鋳造すべきか?
春嶽 外国で鋳造するのがよいでしょう。(久光・宗城も同意)

<ヒロ>
もしかして、この面子が揃ったのは、2月16日の中川宮邸での集会(こちら)以来でしょうか??

慶喜、早速、摂海防御について話し合っています。禁裏守衛総督願望で陰謀論が唱えられ続けている慶喜ですが、もう一つの役職である「摂海防御指揮」について、慶喜がまぎれもなく重要視してたいたことは、察せられるのではないでしょうか。実際、横浜鎖港交渉や長州の外国船砲撃の処置次第では、外国艦船が京都に近い大阪湾に押し寄せ、砲艦外交を迫る恐れがあったわけで、摂海防御は当時の重大課題だったわけですし。

***
●春嶽の守護職辞任及び辞任後の役割について

越前藩邸の集会で、宗城は、慶喜に対し、春嶽の守護職辞職後の役割につき、京都に急変ある際の応援が適切であると主張しました。慶喜も了解しました。

慶喜は、春嶽の解職について、これまで反対していた中川宮は既に同意されたが、「何とか職名を附けさせられたしとの事にて製鉄所総督なと如何との御見込あり」と話しました、これに対し、宗城は、春嶽は最初政事総裁職を命じられており、次に守護職を命じられたのさえ「降等」なのに、今また製鉄所総督を命じられては、いよいよ「降等」であるから、春嶽の不服はもちろん、家臣が決して承服しないだろうと反対しました。さらに、春嶽には「矢張、京師に急変あらん時の応援なと然るへきか」と述べました。慶喜は「如何にも至当の御意見」であると了解しました。

<ヒロ>
中川宮が別の職名をと言い出しているのは、春嶽が守護職を辞職しても滞京することを前提にしているからです。中川宮は、3月28日、中根雪江の入説もあって、春嶽の辞職を許容することにしましたが、その代わり、滞京を強く求めました。慶喜への懸念から春嶽の留任を求めていた中川宮にとっては当然の要請だといえます。

この問いに対して、答えたのが春嶽ではなく宗城だというところが面白いですよね。しかも、宗城がいっていることは、辞職の上は帰国させろっていうことです。実は、宗城と春嶽はともに帰国することを密かに談合していました(こちら)。前日には宗城が春嶽を訪ねて長話をしていますから、そのときにも改めて話し合われたと想像できます。辞職許容の代わりに滞京を求められている春嶽からは、帰国は言い出しにくいことなので、宗城が代わって言い出したのではないでしょうか?


関連■テーマ別元治1「会津藩の守護職更迭問題・春嶽の守護職就任問題

参考:『続再夢紀事』三p75-77, 『伊達宗城在京日記』p403-404(2010/10/4)

【京】越前藩邸の集会で、慶喜帰邸後、長岡良之助が来邸し、密談。一同の帰国について相談。(『伊』p404、『玉』三p758)

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