第56号 2004年8月 睡眠 私は中学3年生の春まで、親に「夜9時には寝なさい」と言われ、実際に就寝していました。今時それはどうかとは思いますが、こどもたちが遅寝・遅起きで睡眠不足になってきています。 睡眠不足の実態
ある調査によると、オーストラリアの3歳児は、午後6時〜8時までに64%が、午後8時〜10時までに31%が就寝していて、午後10時以降まで起きているこどもは5%だそうです。ところが現代の日本では、3歳児の約半数が午後10時過ぎまで起きているのです。 こんな状態ですから、朝遅く起きて朝食もゆっくり味わってなど食べられませんし、なかには食べない子までいます。当然歯磨きもていねいにはできず、しない子も多いのでしょう。もともと目覚めていない脳に、働くためのエネルギーもろくに与えていないのですから、保育園・幼稚園や小・中学校で集中できないのも当然のことといえます。 いまさらながらですが、文部科学省も2006年度から、小学校を対象に「早寝早起き朝ごはん」の取り組みを始めました。 寝る子は育つ なぜ人は眠るのでしょう? からだの疲れは、横になってからだを動かさなければある程度回復できます。ところが、知能や記憶、意識など知的活動を行う脳は、目覚めている限り休息することは不可能なのです。睡眠は、脳を深く眠らせて、精神的な疲労を回復させる大切な時間なのです。 昔から「寝る子は育つ」と言われていますが、脳が深い眠りに入ると成長ホルモンが分泌されます。この成長ホルモンは、細胞に新陳代謝を促し、骨や筋肉を成長させ、日中の活動で傷ついた筋肉や内臓などを効率よく修復する働きがあります。 つまり睡眠とは、からだと脳の再生時間、からだと心の健康を保つために大変必要なものなのです。 なお、睡眠中の無呼吸(睡眠時無呼吸症候群)が繰り返されると、睡眠不足から日中の眠気、集中力・判断力低下だけでなく、心臓に負担をかけるため、高血圧、狭心症、心筋梗塞、さらに脳梗塞などを合併しやすいといわれています。 睡眠の種類 睡眠には浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠とがあり、約90分周期で、一晩に4〜5回繰り返されています。 レムとはREM:Rapid Eye Movement のことで、急速な眼球運動が出現する睡眠状態で、レム睡眠は俗に夢を見る睡眠といわれています。脳が起きているような浅い眠りの状態ですが、からだは深く眠っており、脈拍や呼吸は不規則になっています。 これに対してノンレム睡眠は、脳が眠っている深い眠りの状態といえ、脈拍や呼吸は少なくなるものの、規則正しく働いています。 よく理想の睡眠時間は「1日8時間」なんていわれています。こども達は少なくとも8時間以上でしょうが、大人の場合は、もっと少ない睡眠時間の人も、だらだらと長く眠る人も、ノンレム睡眠の時間はあまり変わらないようです。ですから長さより質、すぐ眠れて、ぐっすり眠り、すっきり目覚めるのが良い睡眠といえます。 眠れないからと「寝酒」を利用している人も多くいますが、確かに寝つきは良いのですが、睡眠全体が浅くなってしまい、そのうち酒量も増えていくので、好ましいことではないようです。 体内時計 光や騒音の届かない地下に住居を作り、人を自由に生活させる実験を行うと、人には約25時間周期で、睡眠と目覚めを規則正しく繰り返すというリズムがあることがわかりました。このしくみを体内時計、生体時計、生物時計などといいますが、人の場合はこの時計の周期が25時間のため、地球の自転の周期である24時間とは、放っておけば1日に1時間ずつずれこんでいくので、12日たつと昼夜は逆転してしまうのです。したがって、人のからだは自分の持っている体内時計を、地球時間に同調させる必要があります。 この同調の手段として、毎朝決まった時刻に朝食を食べたり3食きちんと食べること、保育園・幼稚園や小・中学校の始業時刻などがありますが、最も効果的なのは太陽の光です。朝の太陽の光によってリズムがリセットされ、体内時計の周期が短く調整されるのです。時刻の異なる海外に出かけても適応できるようになるのは、まさに太陽の光のおかげなのです。 逆に言えば、夜更かしして夜間に明るい光を浴び続けると、体内時計はまだ昼間だと勘違いしてしまい、さらに目覚めの時刻がずれていくのです。 うつぶせ寝
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