57号 2004年9月 知覚過敏

 

正式には、象牙質知覚過敏症といいます。

 

むし歯でもないのに歯がしみる

 むし歯でもないのに冷たい水がしみて耐えられない、の根元(歯頚部:しけいぶ)に歯ブラシがあたると飛び上がるほど痛い、これが象牙質知覚過敏症の歯頚部版です。またまれに、むし歯でもないのに硬いものを噛むと痛いということがあります。これは象牙質知覚過敏症の咬合面版です。どちらも象牙質が露出していることによります。

 

 

歯の表面の硬いエナメル質の層の下には象牙質があります。象牙質の中には、放射線状に象牙細管という細い管が歯の歯髄(神経)に向かって通っています。外からの刺激はこの管を通じて神経に伝わり、神経はそれらの刺激を痛みとして脳に伝えるのです。むし歯でなくとも、象牙質が直接刺激にさらされる状態になれば歯はしみて痛みを感じるのです。

 

 

楔状欠損

 歯の根元部分である歯頚部は、エナメル質の層が薄くなっています。また、歯周炎(歯槽膿漏)が進行して歯肉(歯ぐき)が下がって根の部分が露出すると、象牙質を覆っているのはエナメル質よりも軟らかいセメント質になります。この歯頚部を、強い力でゴシゴシ横磨きをしたり、歯磨き剤をいっぱいつけて磨いたり、歯ぎしりや噛み合わせが悪く歯に余計な力が加わったりすると、楔状に歯が削れてしまいます。これが楔状欠損です。

 楔状欠損は必ずしも病気ではありませんが、進行すると知覚過敏を伴うことがあり、むし歯になることもあります。ですから、軽度のうちに気付いて進行を食い止めておきたいものです。

 

 

治療法

Step-1:まずは、歯磨き剤の使用や酸味のある食品の摂取を止めます。そして正しいブラッシング法を身につける必要があります。強い力でゴシゴシ磨くのはもちろんですが、痛いからと歯ブラシをあてないこともよくありません。歯ブラシがあたらなければ歯垢しこう)、つまり細菌(バイ菌)が歯頚部に停滞することによって、細菌の出す毒素が象牙質に直接刺激を与えるからです。また、歯ぎしりや噛み合わせが悪く歯に余計な力が加わっている場合は、できるだけ除くようにします。

Step-2Step-1だけでは改善しない場合、薬剤を使用します。以前より、フッ素、水酸化カルシウム、シュウ酸塩、カリウム塩などがありますが、残念ながら劇的に効果のあるものはありませんでした。しかし、数年前開発されたグルタルアルデヒドを利用した製品は、かなり効果的です。レーザー治療も効果的なようです。

Step-3Step-2だけでは改善せず、楔状欠損を伴う場合は、象牙質の削れた部分にコンポジットレジンというプラスチックを詰めます。しかし、コンポジットレジンも年々優れた製品が開発されてはいますが、歯を削らずに詰めるものはなく、安易に選択する方法ではありません。

Step-4:歯を削ってまでして行ったStep-3でも改善しない場合は、残念ながら歯髄(神経)を取らざるをえません。しかし、いったん神経を取り除かれた歯は、再度むし歯になってもしみる・痛むの感覚や防御反応がなくなり、歯の組織の修復機能・成熟機能も止まるばかりでなく、木が枯れ木になると脆くなるのと同様に、歯も構造的に脆くなります。また、神経を取るという処置は、直接目で見えない口のなかで、しかも、複雑な形態・構造をもつ歯根の内部に対して、手探りで行うために高度な技術と経験を必要とするため、残念ながら治療の予後は、必ずしもすべて良好とは言いがたいものがありますので、極力避けるようにようにしましょう。

 

 

 

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