6月の「今日」 幕末日誌文久2 テーマ別日誌 事件:開国:開城 HP内検索  HPトップ

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文久2年6月3日(1862.6.29)
【江】将軍家茂、一橋慶喜を招いて懇談。
【江】幕府、勅使東下は薩摩藩の願いから出たもので、天皇の意思でないと知る
【江】薩摩藩士伊地知貞馨、越前藩に助力を求める

■慶喜・春嶽の登用
【江】文久2年6月3日、一橋慶喜・前尾張藩主徳川慶勝・阿波徳島藩主蜂須賀斉裕が召しだされて登城しました。これ以降、「御懇に御相談等」もあるからという趣旨だったそうです。なお、斉裕は断ったそうです。

参考>『再夢紀事・丁卯日記』(2003.6.29、7.12)

■勅使東下
【江】文久2年6月3日、在京の和宮の伯父橋本実麗(宰相中将)から在府の和宮の生母の橋本観子(観行院)宛に書簡が届きました。

その趣旨は、<今回の勅使は薩摩藩の願いによって派遣されるもので、天皇は幕府を気の毒に思っている(「此度勅使は島津家の願によって指下されし義にて叡慮には甚御気之毒思召候」)>というものでした。また、<三ヶ条の勅意のうち一ヶ条を受け入れれば薩摩藩は満足するだろうし、薩摩藩さえ満足すれば別に天皇の意思ではないのでそれでよいだろう(「勅意ハ三ヶ條之内一ヶ條相済候ハ薩州落付可申薩さへ落付候へハ別段叡慮不被為在」)>との文意もあったそうです。

和宮から書簡を渡された家茂は、老中に返書の案文を起草するよう命じましたが、幕政参与の松平春嶽は、書面で返答すれば後々証拠となり不都合なので、口上で礼を述べる方がよいと助言し、書面での返答はとりやめになったそうです。

<ヒロ>
三ヶ条の勅意は、(1)将軍上洛による国是の議論、(2)五大老の創設、(3)慶喜の後見職・春嶽の大老就任です(こちら)。三ヶ条のうち一ヶ条というのは、久光の主張である(3)を指すのだと思います。

この書簡により、幕府の薩摩藩への不信感がより増したのは想像に難くありませんよネ。「再夢紀事」にも「野史氏云 薩は衆兵を擁して入京し、浪士輩の暴挙を鎮厭(鎮圧?)し、一時の威力に謬り、帝帷(ていい)に迫り、強て国論の趣意を暢達せんとするの策略は街談巷説のみならず、此如くの確証あるを以て、幕府に於いても薩の狡計を忌憚嫌悪する事、尤も甚だしかりしなり」と注が入れられています。

参考>『再夢紀事・丁卯日記』(2003.6.29, 2005.7.12)
関連:■「開国開城」>「文2:勅使&島津久光東下との幕政改革」 ■テーマ別文久2年:「一橋慶喜・松平春嶽の登用問題と勅使大原重徳東下

【江】文久2年6月3日、勅使大原重徳に随従して東下中の薩摩藩国父(藩主の実父)島津久光の使者伊地知貞馨(いちじ・さだか、堀小太郎・次郎)が、江戸越前藩邸を訪問し、勅使及び久光の国事周旋への助力(すなわち、勅意三ヶ条のうち、慶喜・春嶽の登用の実現への協力)を求めました

伊地知は5月22日に京都を発ち、途中で久光一行を追い抜き、6月2日に江戸に着いたそうです。この日の訪問は突然で、春嶽が不在だったため、越前藩では中根雪江と酒井十之丞が応対しました。

伊地知によれば、久光が春嶽に助力を求めたのは、春嶽とは親しかった先代島津斉彬(久光の異母兄)の遺言によるものでした(「故薩摩守殿ハ老公(春嶽)無二の御知己にて天下の大事も外夷の重件も種々被仰置候事之由ニ而先終ニ臨んて三郎殿の手を把って国事を託せられ且公武御合体天下一和之義を老公へも被為謀御周旋有之様呉々の御遺言有之」)。伊地知は、春嶽への面会を求め、(1)勅意三ヶ条のうち二条は減らして一条が残ったこと、(2)この一条さえ実現すれば、「万端何の御子細もなく」すむことを内々に伝えれば、引き返して勅使大原重徳と久光に報告したいと述べました。さらに、久光は6月7日に江戸に到着するので、翌8日是非春嶽と面会をと申し入れました。

<ヒロ>
三ヶ条の勅意は、(1)将軍上洛による国是の議論、(2)五大老の創設、(3)慶喜の後見職・春嶽の大老就任(こちら)で、残った一条とは、久光の主張である(3)を指します。なんだか上の橋本中将からの密書の内容と、やっぱり平仄があいますよね。一条さえ実現すれば勅使は使命は果たされるというわけですが、これは、幕府にとっては、朝廷や外様である薩摩藩による中枢人事への介入となるわけで、ハイハイと請け難いことなのでした・・・。実は、幕府は、先手を打って、5月7日に春嶽に幕政参与を命じ(こちら)、同月9日に将軍後見職田安慶頼を免じています(こちら)(後者は、将軍にもはや後見はいらないというポーズです))。

参考>『再夢紀事・丁卯日記』(2003.6.29, 2005.7.6)
関連:■「開国開城」「文2:勅使&島津久光東下との幕政改革」 ■テーマ別文久2年:「一橋慶喜・松平春嶽の登用問題と勅使大原重徳東下」「薩摩藩と越前藩

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