第20号 2001年8月 口臭
清潔社会 高度に進んだ「清潔社会」である日本では、ここ数年、テレビCMをはじめとした各種マスコミにおいて、消臭グッズ・抗菌グッズが毎日のように登場し、また、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどでは、それら商品の占めるスペースが確実に増加してきており、口臭に対する関心も高くなってきていると思われます。 口臭は単に個人的な悩みの問題としてだけではなく、コミュニケーションを妨げることや、要介護者のケアにおいても大きな障害になることなど、わたしたちの人間関係や社会生活に大いに関係しています。 人間が吸う空気はみな同じなのに、吐く息が違ってくることには多くの原因があげられますが、大きく分けると、生理的口臭と病的口臭があげられます。 生理的口臭 ニンニクを食べた後やお酒を飲んだ後で、口が臭くなることがありますが、これらは一時的なものであり、それらの飲食を避ければ防ぐことができます。 生理的口臭の発生源としてほとんどは、舌の上にのっている白い苔状のもの:舌苔(ぜったい)であると考えられています。舌苔は、舌の上についた細菌(バイ菌)、不要になった細胞、食べカスなどからなり、時間とともに腐敗していき、口臭原因物質を発生します。その主なものは、揮発性の硫黄化合物で、低濃度であればいわゆる焼き海苔の香りで、濃度が増すと腐卵臭、さらに増すと火山性ガスのような毒性ガスとなります。 その他の原因としては、歯垢(しこう)や、喫煙によるニコチンやタールの付着があります。
病的口臭 病的口臭の8〜9割は、口のなかに原因がある場合で、それ以外は、全身に原因がある場合です。 口のなかに原因がある場合は、ほとんどが歯周病で、その他にはむし歯の放置、口内炎、口腔癌、唾液分泌の減少(ドライマウス)などがあります。特に、歯周炎(歯槽膿漏)による口臭は、電車やエレベーターの中で1〜2m離れていても周囲の人に不快感を与えることがあります。これは、常に歯肉(歯ぐき)からの出血や膿が出ているため、歯垢や舌苔の量が多く、なおかつ腐敗も進んでいるからです。歯石をとるのはもちろん大切ですが、プラークコントロールがうまくできていなければ、また歯石がついてしまいます。ですから、まずは歯科医院で正しいブラッシング法を教わり、さらにそれを毎日続けていくことが大切です。 全身に原因がある場合は、呼吸器疾患、消化器疾患、耳鼻咽喉疾患、腎臓疾患(魚臭い・アンモニア臭・尿臭)、肝臓疾患(腐った卵とニンニクの混じった臭い・ネズミのような臭い)、糖尿病(甘い臭い)などがあります。 仮性口臭症 これは、実際には他人が感じていない口臭を、自分では強い口臭があると思い込み、いつも気になって頭から離れず、情緒不安定になっている状態です。最初にも指摘しましたが、今の日本は、高度に進んだ「清潔社会」になってしまったので、必要以上に口臭を気にする方もいるのです。性格的には潔癖症で几帳面、責任感が強い方に多いようです。 自分なりにはブラッシングができているのに口臭が気になる場合は、客観的に判断できる専門家:歯科医に診てもらいましょう。特に大学病院などには、口臭を測定する機器を設置しているところも多いので、受診してみてください。 洗口剤って効くの?
洗口剤は、唾液の中に浮いている細菌や食べカスには効果がありますが、歯についた歯垢や、舌についた舌苔には、ほとんど効果はありません。それどころか、それらの使用によりサッパリした感じになってしまい、ブラッシングを怠りがちになってしまうので、かえって逆効果ともいえます。ブラッシングができない際に、消臭剤というより芳香剤という感覚程度でお使いください。 |
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