8月の「今日の幕末」 幕末日誌文久3) 事件:開国:開城 HP内検索  HPトップ

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文久3年6月29日(8.13):
【京】坂本龍馬、勝海舟の使いとして越藩村田巳三郎を訪ねる

【京】文久3年6月29日、軍艦奉行並勝海舟の使いとして坂本龍馬が越前藩村田巳三郎を訪ねました

村田に面会した坂本は、勝の使いであるとともに、国事を論ずるために来たと述べたそうです。勝の用件とは、騎兵銃一挺を越前藩に贈ることでした。先日、越前藩が神戸に海軍所を新設するために必要な資金の一部を、勝の依頼で援助したことへの礼でした。坂本の国事の議論は以下に要約するとおり。

坂本 最近の天下の形勢を察するに防長二州は異国に征服されるのではないか。一旦征服されれば挽回することは困難であり、有志の者は傍観している場合ではない。談判の上、外国人を日本から立ち去らせ、内治を整えるべきである。このことを実行するには江戸の幕府役人を退けるのが第一の要務なので、まず勝・大久保(一翁)を説得して目的を定め、春嶽公父子・長岡良之介公子・(山内)容堂の四人が上京して、「一時に此大策を挙」げるべきである
村田 長州人は軽挙して事を誤った。ゆえにたとえ外国人が談判に服して日本を退去することになっても、己の軽挙については償金を出して謝罪すべきである。そうでなくては、日本は万国に対して不義無道の汚名を取り、「永世安全の道」がない事態となる。然るに、朝廷は却って長州の挙動を是としているので、償金の件は容易ではない。これは、目下の一大難事である
坂本 そのような条理もあるだろう。しかし、長州が国の為に死を決した気節は賞賛すべきであり、助けるべきである。空しく傍観すれば、二州が外国に征服されるだけでない。もしかすると、長州人が憤怒に耐えかねて関東に下って暴挙を企て、江戸に放火したり横浜を襲撃したりするかもしれない。そのような事になれば、国難はさらに増すことになるだろう。今は、速やかに幕吏を処置し、外国人退去の談判を開くべきである
村田 外国人がもし退去の談判に服さなければ、どうする
坂本 全国一致の力を以て防戦すべきである
村田 これは、長州の軽挙で事を誤ったばかりに全国が共倒しようとするものである。朋友数人が同行しているときに、そのうちの一人が短慮で他人に暴行を加えて争闘になったのなら、その一人を助けるのは朋友に対して義というべきだが、一国の臣民が外国の臣民に暴行を加える事があれば、その君主たるものは、必ずその理非を鑑別して相当の処置に及ばねばならない。長州の件も同じであり、決して長州にのみ偏るべきではない
坂本 長州が軽挙して事を誤った罪は貴説によって明瞭である。しかし、小生はそのことを次とし、先ず莫吏を処置することを欲する。どうか速やかに勝・大久保のもとに使者をだしてほしい


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なお、『続再夢紀事』のこの部分では、「坂本」ではなく、「坂下」と記されています。

参考:『続再夢紀事』二(2004.9.19)

■薩英戦争
【薩】文久3年6月29日、薩摩藩家老川上但馬は、英国代理公使ニールに対し、要求箇条を論詰し、幕府役人立会の上、交渉する旨を回答しました


参考:『続再夢紀事』ニ、『維新史料綱要』四p480(2004.9.19)
関連:■開国開城:「幕府の生麦償金交付と老中格小笠原長行の率兵上京」「薩英戦争」■テーマ別:「薩英戦争」■薩摩藩日誌文久3


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