第42号 2003年6月 ドライマウス 2003年6月4日〜10日は歯の衛生週間で、スローガンは「わたしの歯 みらいへつづく たからばこ」でした。歯の寿命を延ばすことにより、からだの寿命も延びるのです。大切な歯と歯肉(歯ぐき)を守る正しいケアを、ぜひ今日から始めていきましょう。 高齢者・有病者の増加とともに、さまざまな原因によって唾液分泌量が減少して、お口の中の乾き(口腔(こうくう)の乾燥)を訴える人が増えています。 こうした症状をドライマウス、正式には口腔乾燥症といいます。 症状
口の中がネバネバして話がしにくい、水をよく飲むのでペットボトルが手放せない、夜中にのどが渇いて目が覚め、ひどくなると渇きのために満足に眠れない、クラッカーなどの乾いた食べ物が噛みにくく、お茶や水がないと食べ物が飲み込みづらいなどが主な症状です。 唾液には、食べ物を飲み込みやすくして消化を助け、口の中の汚れを洗い流し歯の表面をきれいにしたり、口の中の細菌やウィルスを殺し傷を治すなど、さまざまな働きがあります。このため、唾液の分泌が少ない状態が長く続くと、抗菌作用が低下して細菌が繁殖して、むし歯や歯周炎(歯槽膿漏)・歯肉炎、口腔カンジダ症になりやすくなったり、舌苔(ぜったい)が増えるため口臭がひどくなったりします。 舌や頬の内側の粘膜、唇などが自由に動かせないと、発音障害を引き起こしたり、水分に溶けるべき味分子が、舌の味を感じる細胞が集まってできた味蕾(みらい)という器官に到達しにくくなると、味覚障害になったりもしますし、食べ物が唾液にくるまれないと、嚥下(えんげ:ものを飲み込むこと)障害につながることもあります。 また、かぜなどのウィルスが体内に侵入しやすくなり、感染症にもかかりやすくなることもあるようです。口の中や消化管が傷つきやすくなるので、口内炎や咽頭炎、食道炎、萎縮性胃炎、また要介護高齢者では、誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすくなります。 原因 ドライマウスが高齢者に多いのは、老化に伴う唾液腺の萎縮による唾液の分泌低下、薬の副作用、合併症、ストレスなど、原因は多岐にわたっています。 ○ 薬の副作用…多くの薬の副作用に「口渇」があります。高齢者の方の多くは、高血圧症であることが多いのでその薬:降圧剤や、うつ病に対する薬:抗うつ剤や精神安定剤、不眠症に対する薬:睡眠導入剤、いわゆるかぜ薬などに含まれている抗ヒスタミン剤の副作用による、口の渇きがあります。ドライマウスで不眠症の方に抗うつ剤などが処方されると、さらに症状が悪化することが少なくありません。 ○ ストレス…唾液の分泌は自律神経によってコントロールされ、ストレスがあると唾液の分泌が正常に行われません。 ○ 全身の病気…糖尿病や、慢性腎不全などの腎臓病、頭や頚部の癌に対する放射線治療、膠原病やシェーグレン症候群、脳血管障害などの深刻な病気、また更年期障害でドライマウスの症状が出ることがあります。特に糖尿病の場合、大量に尿が出て脱水症状となり、口やのども渇きやすくなります。 ○ 口呼吸…若者やこどものドライマウスは、口呼吸(いわゆる「お口ポカーン病」)、つまりあごの筋力低下が原因と考えられています。現代の食事は、めん類やファストフードなど、しっかり噛む必要がないものが増えているので、唾液の分泌能力が低下している可能性があります。食生活および、飲み物で流し込むような食事方法を見直す必要があるでしょう。 対策 ドライマウスはさまざまな原因から起こるため、まずは原因となる合併症がないかどうか、きちんと調べてもらいましょう。 ☆ 薬の変更…薬の副作用が疑われる場合は、副作用の少ない薬への変更や減量を主治医と相談し、普段から薬に頼り過ぎないように心がけることも大切です。 ☆ よく噛んで食べる…食材としては、唾液の分泌を促す作用のある梅干し、酢、酸味の多い柑橘類などがおすすめです。また、硬いものはもちろん、繊維性や弾力性に富む、噛みごたえのある食べ物はドライマウスの予防にもつながります。唾液腺が障害を受けていない限り、噛む回数を増やせば、唾液は多く分泌されます。 ☆ ブラッシングをこまめに…ブラッシングは口腔ケアだけでなく、口腔内が刺激され唾液が出やすくなり、大変有効です。 ☆ 唾液腺マッサージ…食前に耳の下の耳下腺(じかせん)、あごの下の顎下腺(がっかせん)や舌下腺(ぜっかせん)などの唾液腺をマッサージしましょう。 ☆ 喫煙せずにお酒は適量…喫煙すると唾液分泌が抑制されます。口腔の清潔のためにも喫煙はしないのが正解。お酒には利尿作用があり、唾液分泌の減少につながるのでほどほどに。 ☆ キシリトールの利用…あめをなめたり、ガムをかんだりすることで唾液力が上がりますが、むし歯だらけになってしまいます。甘味料がキシリトールであることを確認しましょう。 ☆ 部屋の乾燥を防ぐ…エアコンなどで乾燥した部屋にいると鼻が乾き、鼻が詰まることで口呼吸になりやすくなります。 ☆ 会話を活発に…人と会話をしたり、笑ったり、歌ったりすると表情筋がよく動き、唾液腺も刺激されます。「笑い」は改善効果の高い運動です。家族や友人とのおしゃべりを楽しみこともひとつの方法です。また自律神経にも働きかけ、ストレス発散にもなります。 ☆ 軽い運動を心がける…ストレスによってからだが常に緊張していると、自律神経失調状態になりやすく、唾液の分泌が低下します。ストレスをためず、発散できる手段をもちたいものですね。からだを動かすと、自律神経が刺激されるので、唾液の分泌が高まってきます。ウォーキングなどの全身運動はやはりストレス発散にもなります。 保湿剤
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