第38号 2003年2月 口呼吸 最近のこどもたちによく見られる「おくちポカーン病」。正式には「口呼吸」と言いますが、見た目が悪いだけでなく、むし歯・歯周病・口臭・味覚障害などのお口の病気、しいてはからだ全体の病気までひきおこすといわれています。 呼吸哺乳類にとって鼻は呼吸器の入り口であり、口は消化器の入り口です。よって、呼吸は鼻からによる鼻呼吸のみです。ヒトの赤ちゃんも、口でおっぱいを飲み続けながら、鼻で息をしています。 しかし言葉を獲得したヒトは、鼻と気道の連続性が失われて、口で呼吸ができるようになってしまいました。ヒトの赤ちゃんも、1歳頃には口呼吸ができるそうです。ヒトの場合、口は消化器の入り口だけでなく、呼吸器の入り口でもあるのです。 口への影響 口を結んで食べ物をよく噛んで食べると、頬や唇・舌が歯をこするため、歯の表面に食べカスがつきにくくなります。また唾液がよく出るので、食べカスを洗い流してくれます。しかし鼻で呼吸ができなければ、よく噛むことはできません。口で息をしながら噛むと、ちょっと噛んではすぐ飲み込まざるをえないからです。その飲み込むときも、唇がめくれあがったままでは、上の前歯に食べカスがついたままになりむし歯になりやすくなります。 口がいつも開いている人は、口の中が乾燥するため、口の中の細菌、特に悪性の細菌が増え歯周病になりやすくなります。また舌苔も増えるため、口臭や味覚障害の原因になったりします。 全身への影響 常に無意識に吸い込んでいる空気には、さまざまな病原菌が含まれていますが、鼻から吸い込んだ場合は、病原菌の多くが鼻の粘膜に吸着されます。しかも冷たくて乾燥した空気を、温め湿らせた状態でのどへと送ります。 ところが口から吸い込んだ空気は、ほぼそのままのどまで到達してしまいます。のどには、扁桃腺やアデノイドといったリンパ組織があり、免疫(めんえき)システムの重要な役割を果たしていますが、口呼吸の繰り返しで血液中の免疫細胞が減少すると、からだ全体の免疫力(抵抗力)の低下につながります。 治療法 まず、アデノイド肥大症やアレルギー性鼻炎といった耳鼻科的疾患がある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。 乳児期に哺乳びんを使用する場合は、ゴム乳頭の穴の大きさに注意が必要です。穴が大きいと、乳汁を吸引する時に鍛えられるはずの口のまわりの筋肉が十分に発達しないため、口を結んでいることができないからです。 幼児期に指しゃぶりやおしゃぶりの使用を長期間続けると、上の前歯が出っ歯になり、舌を前に突き出す癖がついてしまうので注意しましょう。 呼吸訓練は、テープや手・指を使って唇を閉じて鼻で息をするようにさせますが、苦しくつまらないので嫌がることが多いです。そこで、ラッパや巻鳥(筒の先についた巻かれた紙を吹いて伸ばすもの。1連、3連などあります)、ゴム風船、シャボン玉などのおもちゃや口笛で遊ばせ、自然と口のまわりの筋肉を鍛えさせるようにさせるとよいでしょう。風船などは、以前はやった「風船ダイエット」にもなりますので、親子で遊んでみるのがよいでしょう。 なお、口のまわりの筋肉を鍛える専門器具に、「パタカラ」というものがありますが、当院でも販売しております。 |
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