12月の「今日の幕末」 幕末日誌慶応3  テーマ別日誌 開国-開城 HPトップへ

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慶応3年11月21日(1867年12月16日)
御陵衛士の生き残り、伏見薩摩藩邸に移送
坂本龍馬・中岡慎太郎襲撃犯を原田左之助だと証言

慶応3年11月21日(1867年12月16日)。油小路事件後、今出川薩摩藩邸に保護された阿部十郎、内海次郎、篠原秦之進は、山田某という薩摩藩士ほか、足軽4名に護衛されて伏見藩邸に移りました(「京在日記」)。そのとき、女中駕籠に乗せられ、女中の代参の格好をして新選組の詮議を避けたそうです(阿部談『史談会速記録』)

そこへ、薩摩藩中村半次郎、土佐藩小目付谷干城及び毛利恭助が訪ねてき、15日夜の坂本龍馬・中岡慎太郎暗殺について尋ねました

この朝、朝、薩摩藩の大久保一蔵(利通)から呼び出された土佐藩小目付谷干城、毛利恭助は、大久保から「今日、新印を伏見薩邸にて一夜の事件(=坂本龍馬・中岡慎太郎暗殺)尋候上、(犯人の)確証を得候時は、如何御取計これ有るべくや」と問われ、「重役へ申聞け、重役より御答へ申すべし」と答たそうです(「神山左兵衛日記」)。その後、薩摩藩中村半次郎が谷・毛利を連れて伏見の薩摩藩邸に向かいました。(「京在日記」)。坂本・中岡暗殺犯について確証が得られるのではないかと期待したからでした。

★「そこで彼の斬り残されの者らは、もともと新選組に入っておったものであるからして、刀にみおぼえがあろうというので、私と毛利と、それから彼の薩摩の中村半次郎と3人で伏見の薩摩屋敷に行って、彼の甲子太郎の一類の者に会うて、その刀の鞘をみせたところが、このニ、三人が評議してみて、これは原田左之助の刀と思うと・・・言い出した」(谷千城の回顧演説『谷千城遺稿』)。

★「どういう声音であったか、(谷らがいうには)なんでも新選組に違いないということでございまして、龍馬を撃ちました時分に「しとめた、しとめた」と言って声をあげました話を(谷らが)いたしまして、マアこういう声音で中国か四国辺の者であろうという声音であったということでございます。そうしますと、今の伊予の松山藩でございましょう、新撰組の原田佐之助という者があって、その声によく似ておりますので、果たして佐之助であろうということになりました(阿部隆明談『史談会速記録』より作成)

<ヒロ>
谷は、回顧演説で、坂本と同時に襲われた中岡が、虫の息で襲ったのは新選組に違いないと言ったと述べており、その確認に伏見へ向かったといいます。また、土佐藩の同時代記録にも、谷・毛利が伏見に向ったのは「一夜の事件(=坂本・中岡暗殺)」について「確証」を得たときにはどう対処すればよいか・・・とあり、新選組の犯行であると予断をもっていたことが推し量られます。

対する衛士生き残りの阿部は、谷らから、「新選組で中国・四国なまり」というのをその声まねつきで示され、それで原田と判断したとしています。鞘が本当に原田のものだったかどうかは不明です。「原田ならやりそうだ」と判断したのかもしれません。

新選組に同志を殺されたばかりで恨み骨髄に達している興奮状態の阿部らが、新選組犯行説を裏付ける証言を積極的にしたことは容易に想像できると思います(かばい立てる理由がありません^^;)。しかし、種々の記録からみると、阿部らが、新選組(原田)に罪をなすりつけようと虚偽の証言をしたというのは、違うような気がします。

なお、伊東が問題の鞘を原田のものだと証言したという説がありますが、これは田中光顕の晩年の回想談によります(『水戸幕末風雲録』)。しかし、中村や神山の日記、谷の回想、阿部の史談等の資料と照らし合わせると、中村・谷・毛利が伏見藩邸を訪れて阿部らからその証言を得たと考えてさしつかえないのではと思います。

関連:
◆慶応3年11月15日−坂本龍馬・中岡慎太郎暗殺。新選組犯行説流れる 11月18日:油小路事件(1)伊東、近藤妾宅へ呼び出される 11月18日:油小路事件(2)伊東、新選組に暗殺される 11月19日:油小路事件(3)油小路の闘い 11月19日:油小路事件(4):伊東らの遺骸が放置される。三樹、加納、富山、薩藩に入る。阿部・内海、土佐藩邸に保護を断られ、戒光寺に11月20日篠原・阿部・内海、今出川薩摩藩邸に保護される /薩摩藩中村半次郎、衛士残党に坂本・中岡暗殺犯(新選組の関与)について質問する/ 11月21日:篠原・阿部・内海、伏見薩摩藩邸へ。三樹らと合流。坂本・中岡暗殺犯について証言/ 11月24日薩摩藩吉井幸輔、伊東の暗殺についてコメント。

同日、長州藩、藩内に出兵を令する
<参考>『史談会速記録』・『誰が龍馬を殺したか』・『水戸幕末風雲録』収録・引用の史料
(2000.12.16/2002.12.16)

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