第20章 未解決の謎
――あの事件から、2年が過ぎた。
もうすぐ今年も終わりだ。
大学4年も大詰めだというのに、不況のあおりの就職難で、ぼくにはまだひとつの内定もない。
事実、今日もあちこち職探しに出歩いた。
そのため、ひどく疲れきっているのだ。
こんなときには、優しく慰めてくれる恋人が欲しい……そんなことも、ついつい考えてしまう。
ぼくが今まで生きてきた22年間の中で、かろうじて恋人と呼べたただひとりの女の子、真理――。
が、彼女が今何をしているのかは知らない。
悲しい事件により殺人者の姪となった彼女は、あのすぐ後に世間体を気にして大学をやめ、ぼくの前から消えてしまったのだ。
事件を起こした本人だけでなく、その家族や親族までをも連帯責任として非難し、世間から抹殺しようとする――。
そんな日本の風潮の醜さを痛烈に感じたぼくは、それを是正できる人間になりたいと、あの日から毎日のように思っていた。
ぼくは自分の部屋のベッドに寝転がり、足を休めつつ窓の外を眺めていた。
……今夜は満月だ。
どうも「満月の夜」というのはいいイメージがない。
狼男が現れるとか、殺人事件が多発するとか……。
殺人事件。
そうだ。あの事件からもう丸2年になるのか――。
時が確実に流れ、まわりも変化したというのに、ぼくの記憶にはあの事件が鮮明に残り続けていた。
原稿用紙を出して書き始めたら、きっとひとつのミステリーとして成立するだろう。
過去のことだ、忘れよう、忘れてしまえ――。
ぼくは思ったが、それが本心でないことは明らかで、ブレーキが利くことなどなく、記憶が次々と飛び出してきた。
事件とともに、13人全員のキャラクターが蘇る。
いろいろな人がいたものだ……。
責任感が強い人。
正義感の塊のような人。
強引な人。
思い立ったらすぐ行動に移す人。
感情の揺らぎを強さに変えられる人――。
そして、ちょっと協調性に欠ける女の子や、意地っ張りなだけで気弱な男。
……こうして集めてみると、本来はとても楽しいメンバーだったのにと思う。
……ん?
そのときぼくはふと、その中のある人物が心に引っかかった。
どういうことなんだ?
……冷静に考えようとしても、次から次へと湧いてくる何かにそれを邪魔されてしまう。
それは疑惑のようでもあるし、悲しみや心配のようでもある。
あるいは、未解決の謎のようにも……。
気になる……どうしてこんなに気になるんだろう?
ぼくは、その人物と気になる理由を、もっと詳しく突き詰めてみることにした――。
《透が気になった人物とは、誰だったでしょう? 登場人物13人の中からひとり選択してください》