清時代に出版された芥子園画伝という山水画の手引き書がある。原本は貴重なもので私ごときは入手できないが、日本で出版されているものもある。 山水の心得はなくとも、樹木、山石、人物屋宇などの手本が羅列してあるので、模写をすればそれらしくなるというわけだ。 年賀状用に描いてみたのだが、漠然と見ているのと違って写す作業があるので、山並みが奥え奥えとつながり、樹木が点綴されていく様がはっきり分かった。松の葉も手数は多くないが、いかにも松になるのに驚かされる。 パーツの模写はいいとしても、組み合わせは己の才覚である。たちまちにして馬脚を現すことになってしまった。
ハエ(双翅)目糸角亜目カ科ナミカ亜科アカイエカというらしい。体長0.5センチメートル。 この季節になっても暖かい日は蚊が出てくる。 日中に寝室の窓ガラスに止まっていたのを捕まえる。腹が黒かったので血を鱈腹吸った奴だろう。 昨夜蚊に悩まされていたのだが、こいつではなかろうか。などと考えた。敵はとったというわけだ。
ハエの口器は吸収式というのだが、どうなっているのか追求してみた。 注意して見ていると頭の下から伸びてくるものがあり、餌の表面に当て、せわしなく動かしている。 先端の舟型でため込んでいるのだろうなどと思って解剖したところ、二枚合わさっていて、それぞれにリング付きの細管が整然と並んでいた。 吸い込み箇所は多数ありますと言うわけだ。 (オリンパスBH-2) 1枚目 対物レンズ10X 暗視野 その他 対物レンズ40X
MWSの「日本の宝石サファイア」を求めた。もちろん微少な石粒なので、顕微鏡の友だ。 産地は奈良県二上山付近穴虫地区だそうだ。天然サファイア10粒、水晶10粒とガーネット5粒が整然と並べられていた。 本家の写真には及びもつかないが一個のサファイアの写真を紹介しよう。 三角形はトライゴンと言うそうだ。分子が規則正しく並んで結晶になるらしいが、その一つの規則だろう。残念ながら知識がなく説明できない。理屈は抜きで造形美を鑑賞するのみである。 MWSの奥氏には感謝を捧げたい。珪藻にしても自作であの美しさは作ることはできない。氏の努力のおかげで僅かな費用で美しい世界が自分のものにできるのである。
ハチ(膜翅)目細腰亜目スズメバチ科クロスズメバチのようだ。体長1.1センチメートル。 10月末に玄関のシャリンバイに飛んできたもの。この木には良く虫が飛んでくるし蜘蛛も沢山いる。原因がやっとわかった。沢山付いているアブラムシのせいだった。 クロスズメバチの目的はアブラムシの出す蜜を求めているのではないかと思うが、葉っぱの間をせわしく動き回っていたのだ。 スズメバチとは言え、小さいし、おとなしい種類らしいので安心して捕まえたのだ。かわいらしいものだった。
前回のウリハムシのポーズを変えて描いてみた。 自然でこんな格好はあまりしないと思うが、ガラスの壁が手前にあるので前脚と中脚をガラスに当てて方向転換をしているところである。 頭と前胸を突き出したので、普通は重なっている前胸と中胸の外骨格が離れて柔らかい内皮が露出した。 たいてい白っぽいものだがウリハムシは外骨格と同じような色をしている。 オレンジ色の外骨格も内皮も、体の中の色をかなり反映しているようだ。
甲虫(鞘翅目)目カブトムシ亜目ハムシ科ヒゲナガハムシ亜科ウリハムシでまちがいないだろう。体長0.8センチメートル。 玄関先のカラーの葉の裏にいたが、成虫で土の中で越冬して、春に産卵するそうである。越冬前のものかもしれない。ウリ科の植物を幼虫は根、成虫は葉を食べるので嫌われ者らしい。 1センチ以下の小さなムシなので、肉眼では赤っぽいだけでそれほど美しいとも思えないが、顕微鏡下ではガラスにオレンジで着色したような感じで実に綺麗なものである。
ハエ(双翅)目短角亜目ハナアブ科ハナアブ亜科アシブトハナアブというらしい。体長1.6センチメートル。 今の時期でも昆虫は活動している。ハエやハナアブなど日当たりのよい場所を飛んでいる。花粉か蜜のあるところ、アブラムシが蜜を飛ばしているところなどに集まるようだ。 そんなところにはジョロウグモが巣をかけていて、沢山餌を食べているのだろう。この頃は見事な体になってきた。 食べるものあり、食べられるものあり、自然界は厳しい世界なのをつくづく感じるのだ。
ハチ(膜翅)目細腰亜目アリ科ヤマアリ亜科サクラアリだと思う。家族を描いてみた。 女王は体長0.8センチメートル、雄は0.4センチメートルで働きアリは0.15センチメートルである。 働きアリは動いていないとまず見つからない。葉っぱの上を赤っぽい点が動いているのでやっと分かるのだがどこにでもいるらしい。 女王アリは何匹も右往左往している時期がある。胸部も腹部もぼってりして魅力を感じない形である。一方雄アリはすらりとしてアリらしくないスマートさである。 女王と雄は巣から羽ばたき交尾する。女王は翅を落として新しい巣を作り働きアリを産むわけだ。女王アリと雄アリは、以前捕まえていたものだが、この3種類が家族だとは思いもしなかったのだ。
ツマグロキンバエというらしいが、ヤツデの花穂に群がって花粉(?)密(?)を食べていた一匹を捕まえて撮影した。 0.7センチメートルぐらいの小さな虫で肉眼では黒っぽく見えるだけであるが、実際はカラフルである。 ただ不思議なのは、複眼が実物と異なる色に写っていることである。 赤い縞に緑が一本混じっていて華やかなもので、こちらの絵は嘘をついたことになってしまうが、でたらめを描いたわけではない。 変哲もない複眼に横縞があること自体が不思議ではあるうえに、写真に撮ると色が変わるとは、ますます不思議なことである。小難しい光学を理解している人にとっては簡単なことかもしれないが、私には説明不能である。 下段は口器を伸ばしているところ。頭を上下させなくても摂食できる伸縮自在の口をハエは持っている。 色変わりの説明ができないお詫びのつもりで載せるのだ。
個展の昆虫の細密画をみてヤモリの干涸らびたものを持ってくれた人がいた。 個展をした効用がさっそく現れたというわけだ。 頭蓋骨とか背骨とかが浮き上がっているので、ヤモリは脊椎動物なのが実感できる。昆虫には骨はない。 2センチぐらいで干涸らびて尻尾もなくなっていたので、ネットで調べて生きている時を想像しながら描いたが、子供のヤモリのようだ。 イモリは水の中にいて腹が赤黒のまだらになって気色悪かった記憶があったが、ネットではイモリとヤモリの違いを説明しているのもあった。それによると、イモリは両生類で皮膚呼吸をするのでしめった皮膚。ヤモリは爬虫類で肺呼吸で皮膚には鱗があるそうだ。確かに鱗におおわれていた。 指の先には一本爪があり、手のひらにあたるところは繊毛が数列並んでいた。これがあるので壁でも天井でも自由に動き回われるのだろう。確かに地上の生き物だ。
人の動きを素早く写し取ることはなかなか難しい。昆虫はなおさらである。 昆虫の微細な構造にこだわって写生してきたが、なんとか動きも捕まえたいとの思いが強くなってきている。 ボケボケの写真を見せられてものなぁーと言う声が聞こえてくるが、この形に顕微鏡で確認した微細構造をまとわせれば立派な絵になるという算段だ。
絵を描くのはなかなかしんどいものである。それだからと言うわけでもないが、ここのところ写真撮影に夢中になってしまった。 小道具をいろいろ工夫して、小さな箱に生きた昆虫を閉じ込めることができるようになったのである。 箱の側面を半透明の材料にして表面をガラスにしているのでなかなかいい調子で撮影ができる。 私の持っているコンパクトデジカメのマクロでは小さくしか写らないが、クローズアップレンズを使えば大きくなるのに気がついた。カメラは固定するので虫眼鏡でもいいのではないかと試してみたら結構大きく写った。 本格的なマクロ撮影の画像からすれば子供だましに近いが、生きた姿を写真に残せるのはありがたい。 デジカメは何枚でも撮れ、結果もすぐ確認できるので動き回る昆虫も数打ちゃあたるのである。 このハエはクロバエ科のケブカクロバエだと思う。複眼の間が開いているので雌だろう。ハエの同定はとっても難しく正式には交尾器を調べる必要があるなどと書いているサイトがあった。体長1.3センチメートル。
動物も「けもの」と言うくらいで毛だらけだから、昆虫だって毛だらけでも不思議ではないとも言えるが、固い殻もあるのだからつるりとしてても良さそうなものだ。 そう思ってハエを見ると、堅くて長大なものがついているのに驚かされる。肉眼ではあまり感じないが拡大すると凄まじいものだ。 金属顕微鏡でさらに拡大すると、外骨格に丸い穴が開いて、そこから溝が刻まれた剛毛が出ているのが分かる。分かりづらいが、右側の丸くなっている写真は穴と外れた毛の根元が写っている。 全身に、さらに細いものがあり、下段左側の丸の中のように微少な毛がびっしりついている。いったいどういう意味があるのだろうか。
子供の頃はハエは沢山いた。それも家の中を我が物顔に飛んでいた。蠅叩きは必需品だったものだ。 それが今では表はともかく家の中では滅多に見なくなってしまった。 今年は表でもハエをあまり見かけない。蚊もやけに少なかった。 福島から微粒子が飛んできて、雨と共に落ちてしっかり地べたに落ち着いているらしいので、そのせいかなどと気持ち悪くなるが真偽のほどを確かめるすべはない。 と思っていたら、ここ数日玄関の植え込みに大きいハエが飛んできた。 ハエは素早い。元気な奴は近寄っただけであっちへ行ってしまう。離れると戻ってきて憎らしい限りである。なんとか捕まえてやろうと粘った。 捕まえ方は背の高い透明のプラケースを上からかぶせるのだが、熟練してきているのでハエでも捕まえたことはある。 キンバエは僅かのところで入れ損ない、ふちで体をつぶしてしまった。翅が折れたり、脚が取れたりしたが、それをそのままスケッチしたのが上段の絵だ。 下のはヤドリバエと言うらしいが、きれいに捕まえたので、ガラスのふたをした小さな紙ケースに閉じ込めて観察する。 今回は撮影に挑戦してみた。 コンパクトデジカメのマクロ設定なので思うようには大きく撮影できない。それでも生きたままの姿を撮影できたので、単純に喜んで公開するのだ。
ハチ(膜翅)目ベッコウバチ上科ベッコウバチ科ツマアカベッコウらしい。体長1.8センチメートル。 いつも見ている昆虫図鑑サイトでは見つからず「ハチ、尻赤」で検索したらたくさんあった。 もともと南方にいたハチだそうだ。関東地方まで暖かさにつられて北上したのだろうか。 ベッコウバチは蜘蛛を狩るハチらしいので、このハチもサイトの写真では蜘蛛と一緒のが多かった。 個展での反省で空間が感じられなくてはというのがあった。飛行しているのを下から見ているという想定で描いた。インチキであるが、空をパソコン上の処理でつけてみた。 まだまだですね。がんばらなくては。
今回はハナアブの仲間の気管を紹介しよう。 体長1センチメートルほどのものであるが、腹部は黄色に黒の帯がはさまっていてなかなか綺麗なものである。 顕微鏡で見ると黄色く見えるところは外骨格が透けて中の様子が僅かながら見える。 下からの光を当てると網状に広がっているのが分かった。 腹部の両脇に気門があるのでここから出ているのである。 はじめは太くだんだんに細くなり酸素を必要とするところに伸びていくわけだ。 黄色と黒の写真までは去年の12月に描いたり撮影したものだ。 外骨格越しではぼんやりとしか見えないので、気管を取り出してきちんと見たいとは誰でも思うだろう。そこで、からからに乾いていた去年捕まえて保存していた標本を取り出した。腹を開いて気管を見てみようというわけだ。 慎重に開いてみると、外骨格の裏側にぴったりひっついていたものがあった。それを横からの光で撮影したものが最期の写真である。 透明で蛇腹になった管であった。この形なら簡単につぶれないだろう。またしても昆虫の体はよくできていると感心させられたのだ。
杉林は材木を採るために人工的に植えられたものだろう。 散歩の途中に放置されているとしか思えないところがある。嵐が来ると折れたりかしいだりしている。 だんだん空が広がって来るというわけだ。 そして山藤がはびこってくる。 そういうところをわざわざ描いているわけだ。健全な精神とは言い難いが芸術とはそういうものだ。・・・・・・・・などと開きなおろうではないか。
24日は個展最終日だった。毎日行っていたが、台風の日もあり短かいながらたくさんのことがあった。 昆虫を大きく細かいところまで描いたので興味を引いたようである。表の看板をみて通りすがりの人も来てもらえたし、昆虫談義をしてしまうことも多かった。賑やかなものであった。 一方、私の絵を注意深く見続けていた人たちのなかには、がっかりしたと言う人もいた。厳しい意見だが素直に受け止めよう。 今回の個展で、小さいながら植物の絵も描けた。これから発展させられば前途に光明が見えてこようというものだ。昆虫も図鑑的でなく絵画の内容をもったものを描かなければとの思いも出てきた。一週間もまれた結果である。後は成果を出すだけだ。
メダカを飼っている水鉢には水草もある。 咲いているのは小型の蓮の花。上に伸びているのはオモダカというそうだ。旅行したときに妻が採ってきたもので園芸種ではないのだそうだ。 鉢は描かずに水草だけを描いてみた。 個展の出品作だ。
メダカを飼っている水鉢から藻などを採ってくると生き物がいろいろいる。今回は生きた珪藻と球体で良く動いていたものを取り上げよう。 球体のものは植物プランクトンか動物プランクトンかも分からんと言うふがいなさであった。 珪藻はゆっくりと動き、ときどき体を捻る。楕円形が長方形になったりその逆にもなる。 何度見ても同じ種類だという気がしない。斜めから見た立体をすぐには思えないからだろう。 褐色の細長いものが葉緑体だそうだ。これがあるので光合成で酸素を出す植物になるというわけだ。動くものは動物。動かないものは植物と幼い頃にならったが、世の中はそう簡単なものではなかったのだ。 ハネケイソウ(ピンヌラリア)属だとおもう。 (オリンパスBH-2、対物レンズ40X)
19日からギャラリー惣で個展をします。 昆虫のスケッチをずらりと並べて、間に樹木の油絵を入れるとおもしろいとの勧めがあったので、ホイホイと話しに乗ってしまいました。 自分の絵は自分ではなかなか分からないものです。公の場所で他人の厳しい批評の目で見てもらうと勉強になります。また、 ずらりと並んでいるのを一週間見続けると見えてくるものがあります。 今は闇の中にいる状態なので、これを機会に展開してくれることを願っています。
甲虫(鞘翅目)目カブトムシ亜目コガネムシ上科クワガタムシ科クワガタムシ亜科ノコギリクワガタでまちがいないだろう。体長4.8センチメートル。 クワガタの幼虫は、針葉樹が腐朽したものを食べる褐色腐朽材食性と、広葉樹が腐朽したものを食べる白色腐朽材食性などがあるそうだ。 褐色腐朽材食性のものは褐色腐朽材だけを食べ、白色腐朽材食性のものは褐色も白色も食べられるらしい。 褐色腐朽材食性のクワガタは進化の古い型だそうだから、針葉樹しかない時代に生きていたのが現代まで生き延びてきて、広葉樹が出てきたときに、進取性のあるものは新しい餌を開拓し、より大きくなり、より栄えたということらしい。 広葉樹はジュラ紀の頃出現したらしいから、恐竜のいた時代だ。昆虫はとっても古い生き物だというのが実感できる話だ。
2011.12.30
清時代に出版された芥子園画伝という山水画の手引き書がある。原本は貴重なもので私ごときは入手できないが、日本で出版されているものもある。
山水の心得はなくとも、樹木、山石、人物屋宇などの手本が羅列してあるので、模写をすればそれらしくなるというわけだ。
年賀状用に描いてみたのだが、漠然と見ているのと違って写す作業があるので、山並みが奥え奥えとつながり、樹木が点綴されていく様がはっきり分かった。
松の葉も手数は多くないが、いかにも松になるのに驚かされる。
パーツの模写はいいとしても、組み合わせは己の才覚である。たちまちにして馬脚を現すことになってしまった。
2011.12.25
ハエ(双翅)目糸角亜目カ科ナミカ亜科アカイエカというらしい。体長0.5センチメートル。
この季節になっても暖かい日は蚊が出てくる。
日中に寝室の窓ガラスに止まっていたのを捕まえる。腹が黒かったので血を鱈腹吸った奴だろう。
昨夜蚊に悩まされていたのだが、こいつではなかろうか。などと考えた。敵はとったというわけだ。
2011.12.20
ハエの口器は吸収式というのだが、どうなっているのか追求してみた。
注意して見ていると頭の下から伸びてくるものがあり、餌の表面に当て、せわしなく動かしている。
先端の舟型でため込んでいるのだろうなどと思って解剖したところ、二枚合わさっていて、それぞれにリング付きの細管が整然と並んでいた。
吸い込み箇所は多数ありますと言うわけだ。
(オリンパスBH-2)
1枚目
対物レンズ10X
暗視野
その他
対物レンズ40X
2011.12.15
MWSの「日本の宝石サファイア」を求めた。もちろん微少な石粒なので、顕微鏡の友だ。
産地は奈良県二上山付近穴虫地区だそうだ。天然サファイア10粒、水晶10粒とガーネット5粒が整然と並べられていた。
本家の写真には及びもつかないが一個のサファイアの写真を紹介しよう。
三角形はトライゴンと言うそうだ。分子が規則正しく並んで結晶になるらしいが、その一つの規則だろう。残念ながら知識がなく説明できない。理屈は抜きで造形美を鑑賞するのみである。
MWSの奥氏には感謝を捧げたい。珪藻にしても自作であの美しさは作ることはできない。氏の努力のおかげで僅かな費用で美しい世界が自分のものにできるのである。
2011.12.10
ハチ(膜翅)目細腰亜目スズメバチ科クロスズメバチのようだ。体長1.1センチメートル。
10月末に玄関のシャリンバイに飛んできたもの。この木には良く虫が飛んでくるし蜘蛛も沢山いる。原因がやっとわかった。沢山付いているアブラムシのせいだった。
クロスズメバチの目的はアブラムシの出す蜜を求めているのではないかと思うが、葉っぱの間をせわしく動き回っていたのだ。
スズメバチとは言え、小さいし、おとなしい種類らしいので安心して捕まえたのだ。かわいらしいものだった。
2011.12.05
前回のウリハムシのポーズを変えて描いてみた。
自然でこんな格好はあまりしないと思うが、ガラスの壁が手前にあるので前脚と中脚をガラスに当てて方向転換をしているところである。
頭と前胸を突き出したので、普通は重なっている前胸と中胸の外骨格が離れて柔らかい内皮が露出した。
たいてい白っぽいものだがウリハムシは外骨格と同じような色をしている。
オレンジ色の外骨格も内皮も、体の中の色をかなり反映しているようだ。
2011.11.30
甲虫(鞘翅目)目カブトムシ亜目ハムシ科ヒゲナガハムシ亜科ウリハムシでまちがいないだろう。体長0.8センチメートル。
玄関先のカラーの葉の裏にいたが、成虫で土の中で越冬して、春に産卵するそうである。越冬前のものかもしれない。ウリ科の植物を幼虫は根、成虫は葉を食べるので嫌われ者らしい。
1センチ以下の小さなムシなので、肉眼では赤っぽいだけでそれほど美しいとも思えないが、顕微鏡下ではガラスにオレンジで着色したような感じで実に綺麗なものである。
2011.11.25
ハエ(双翅)目短角亜目ハナアブ科ハナアブ亜科アシブトハナアブというらしい。体長1.6センチメートル。
今の時期でも昆虫は活動している。ハエやハナアブなど日当たりのよい場所を飛んでいる。花粉か蜜のあるところ、アブラムシが蜜を飛ばしているところなどに集まるようだ。
そんなところにはジョロウグモが巣をかけていて、沢山餌を食べているのだろう。この頃は見事な体になってきた。
食べるものあり、食べられるものあり、自然界は厳しい世界なのをつくづく感じるのだ。
2011.11.20
ハチ(膜翅)目細腰亜目アリ科ヤマアリ亜科サクラアリだと思う。家族を描いてみた。
女王は体長0.8センチメートル、雄は0.4センチメートルで働きアリは0.15センチメートルである。
働きアリは動いていないとまず見つからない。葉っぱの上を赤っぽい点が動いているのでやっと分かるのだがどこにでもいるらしい。
女王アリは何匹も右往左往している時期がある。胸部も腹部もぼってりして魅力を感じない形である。一方雄アリはすらりとしてアリらしくないスマートさである。
女王と雄は巣から羽ばたき交尾する。女王は翅を落として新しい巣を作り働きアリを産むわけだ。女王アリと雄アリは、以前捕まえていたものだが、この3種類が家族だとは思いもしなかったのだ。
2011.11.15
ツマグロキンバエというらしいが、ヤツデの花穂に群がって花粉(?)密(?)を食べていた一匹を捕まえて撮影した。
0.7センチメートルぐらいの小さな虫で肉眼では黒っぽく見えるだけであるが、実際はカラフルである。
ただ不思議なのは、複眼が実物と異なる色に写っていることである。
赤い縞に緑が一本混じっていて華やかなもので、こちらの絵は嘘をついたことになってしまうが、でたらめを描いたわけではない。
変哲もない複眼に横縞があること自体が不思議ではあるうえに、写真に撮ると色が変わるとは、ますます不思議なことである。小難しい光学を理解している人にとっては簡単なことかもしれないが、私には説明不能である。
下段は口器を伸ばしているところ。頭を上下させなくても摂食できる伸縮自在の口をハエは持っている。
色変わりの説明ができないお詫びのつもりで載せるのだ。
2011.11.10
個展の昆虫の細密画をみてヤモリの干涸らびたものを持ってくれた人がいた。
個展をした効用がさっそく現れたというわけだ。
頭蓋骨とか背骨とかが浮き上がっているので、ヤモリは脊椎動物なのが実感できる。昆虫には骨はない。
2センチぐらいで干涸らびて尻尾もなくなっていたので、ネットで調べて生きている時を想像しながら描いたが、子供のヤモリのようだ。
イモリは水の中にいて腹が赤黒のまだらになって気色悪かった記憶があったが、ネットではイモリとヤモリの違いを説明しているのもあった。それによると、イモリは両生類で皮膚呼吸をするのでしめった皮膚。ヤモリは爬虫類で肺呼吸で皮膚には鱗があるそうだ。確かに鱗におおわれていた。
指の先には一本爪があり、手のひらにあたるところは繊毛が数列並んでいた。これがあるので壁でも天井でも自由に動き回われるのだろう。確かに地上の生き物だ。
2011.11.05
人の動きを素早く写し取ることはなかなか難しい。
昆虫はなおさらである。
昆虫の微細な構造にこだわって写生してきたが、なんとか動きも捕まえたいとの思いが強くなってきている。
ボケボケの写真を見せられてものなぁーと言う声が聞こえてくるが、この形に顕微鏡で確認した微細構造をまとわせれば立派な絵になるという算段だ。
2011.10.30
絵を描くのはなかなかしんどいものである。
それだからと言うわけでもないが、ここのところ写真撮影に夢中になってしまった。
小道具をいろいろ工夫して、小さな箱に生きた昆虫を閉じ込めることができるようになったのである。
箱の側面を半透明の材料にして表面をガラスにしているのでなかなかいい調子で撮影ができる。
私の持っているコンパクトデジカメのマクロでは小さくしか写らないが、クローズアップレンズを使えば大きくなるのに気がついた。カメラは固定するので虫眼鏡でもいいのではないかと試してみたら結構大きく写った。
本格的なマクロ撮影の画像からすれば子供だましに近いが、生きた姿を写真に残せるのはありがたい。
デジカメは何枚でも撮れ、結果もすぐ確認できるので動き回る昆虫も数打ちゃあたるのである。
このハエはクロバエ科のケブカクロバエだと思う。複眼の間が開いているので雌だろう。ハエの同定はとっても難しく正式には交尾器を調べる必要があるなどと書いているサイトがあった。体長1.3センチメートル。
2011.10.25
動物も「けもの」と言うくらいで毛だらけだから、昆虫だって毛だらけでも不思議ではないとも言えるが、固い殻もあるのだからつるりとしてても良さそうなものだ。
そう思ってハエを見ると、堅くて長大なものがついているのに驚かされる。肉眼ではあまり感じないが拡大すると凄まじいものだ。
金属顕微鏡でさらに拡大すると、外骨格に丸い穴が開いて、そこから溝が刻まれた剛毛が出ているのが分かる。分かりづらいが、右側の丸くなっている写真は穴と外れた毛の根元が写っている。
全身に、さらに細いものがあり、下段左側の丸の中のように微少な毛がびっしりついている。いったいどういう意味があるのだろうか。
2011.10.15
子供の頃はハエは沢山いた。それも家の中を我が物顔に飛んでいた。蠅叩きは必需品だったものだ。
それが今では表はともかく家の中では滅多に見なくなってしまった。
今年は表でもハエをあまり見かけない。蚊もやけに少なかった。
福島から微粒子が飛んできて、雨と共に落ちてしっかり地べたに落ち着いているらしいので、そのせいかなどと気持ち悪くなるが真偽のほどを確かめるすべはない。
と思っていたら、ここ数日玄関の植え込みに大きいハエが飛んできた。
ハエは素早い。元気な奴は近寄っただけであっちへ行ってしまう。離れると戻ってきて憎らしい限りである。なんとか捕まえてやろうと粘った。
捕まえ方は背の高い透明のプラケースを上からかぶせるのだが、熟練してきているのでハエでも捕まえたことはある。
キンバエは僅かのところで入れ損ない、ふちで体をつぶしてしまった。翅が折れたり、脚が取れたりしたが、それをそのままスケッチしたのが上段の絵だ。
下のはヤドリバエと言うらしいが、きれいに捕まえたので、ガラスのふたをした小さな紙ケースに閉じ込めて観察する。
今回は撮影に挑戦してみた。
コンパクトデジカメのマクロ設定なので思うようには大きく撮影できない。それでも生きたままの姿を撮影できたので、単純に喜んで公開するのだ。
2011.10.10
ハチ(膜翅)目ベッコウバチ上科ベッコウバチ科ツマアカベッコウらしい。体長1.8センチメートル。
いつも見ている昆虫図鑑サイトでは見つからず「ハチ、尻赤」で検索したらたくさんあった。
もともと南方にいたハチだそうだ。関東地方まで暖かさにつられて北上したのだろうか。
ベッコウバチは蜘蛛を狩るハチらしいので、このハチもサイトの写真では蜘蛛と一緒のが多かった。
個展での反省で空間が感じられなくてはというのがあった。飛行しているのを下から見ているという想定で描いた。インチキであるが、空をパソコン上の処理でつけてみた。
まだまだですね。がんばらなくては。
2011.10.05
今回はハナアブの仲間の気管を紹介しよう。
体長1センチメートルほどのものであるが、腹部は黄色に黒の帯がはさまっていてなかなか綺麗なものである。
顕微鏡で見ると黄色く見えるところは外骨格が透けて中の様子が僅かながら見える。
下からの光を当てると網状に広がっているのが分かった。
腹部の両脇に気門があるのでここから出ているのである。
はじめは太くだんだんに細くなり酸素を必要とするところに伸びていくわけだ。
黄色と黒の写真までは去年の12月に描いたり撮影したものだ。
外骨格越しではぼんやりとしか見えないので、気管を取り出してきちんと見たいとは誰でも思うだろう。そこで、からからに乾いていた去年捕まえて保存していた標本を取り出した。
腹を開いて気管を見てみようというわけだ。
慎重に開いてみると、外骨格の裏側にぴったりひっついていたものがあった。それを横からの光で撮影したものが最期の写真である。
透明で蛇腹になった管であった。この形なら簡単につぶれないだろう。またしても昆虫の体はよくできていると感心させられたのだ。
2011.09.30
杉林は材木を採るために人工的に植えられたものだろう。
散歩の途中に放置されているとしか思えないところがある。嵐が来ると折れたりかしいだりしている。
だんだん空が広がって来るというわけだ。
そして山藤がはびこってくる。
そういうところをわざわざ描いているわけだ。
健全な精神とは言い難いが芸術とはそういうものだ。
・・・・・・・・などと開きなおろうではないか。
2011.09.25
24日は個展最終日だった。毎日行っていたが、台風の日もあり短かいながらたくさんのことがあった。
昆虫を大きく細かいところまで描いたので興味を引いたようである。表の看板をみて通りすがりの人も来てもらえたし、昆虫談義をしてしまうことも多かった。賑やかなものであった。
一方、私の絵を注意深く見続けていた人たちのなかには、がっかりしたと言う人もいた。厳しい意見だが素直に受け止めよう。
今回の個展で、小さいながら植物の絵も描けた。これから発展させられば前途に光明が見えてこようというものだ。昆虫も図鑑的でなく絵画の内容をもったものを描かなければとの思いも出てきた。一週間もまれた結果である。後は成果を出すだけだ。
2011.09.21
メダカを飼っている水鉢には水草もある。
咲いているのは小型の蓮の花。上に伸びているのはオモダカというそうだ。旅行したときに妻が採ってきたもので園芸種ではないのだそうだ。
鉢は描かずに水草だけを描いてみた。
個展の出品作だ。
2011.09.15
メダカを飼っている水鉢から藻などを採ってくると生き物がいろいろいる。今回は生きた珪藻と球体で良く動いていたものを取り上げよう。
球体のものは植物プランクトンか動物プランクトンかも分からんと言うふがいなさであった。
珪藻はゆっくりと動き、ときどき体を捻る。楕円形が長方形になったりその逆にもなる。
何度見ても同じ種類だという気がしない。斜めから見た立体をすぐには思えないからだろう。
褐色の細長いものが葉緑体だそうだ。これがあるので光合成で酸素を出す植物になるというわけだ。動くものは動物。動かないものは植物と幼い頃にならったが、世の中はそう簡単なものではなかったのだ。
ハネケイソウ(ピンヌラリア)属だとおもう。 (オリンパスBH-2、対物レンズ40X)
2011.09.10
19日からギャラリー惣で個展をします。
昆虫のスケッチをずらりと並べて、間に樹木の油絵を入れるとおもしろいとの勧めがあったので、ホイホイと話しに乗ってしまいました。
自分の絵は自分ではなかなか分からないものです。公の場所で他人の厳しい批評の目で見てもらうと勉強になります。また、 ずらりと並んでいるのを一週間見続けると見えてくるものがあります。
今は闇の中にいる状態なので、これを機会に展開してくれることを願っています。
2011.09.05
甲虫(鞘翅目)目カブトムシ亜目コガネムシ上科クワガタムシ科クワガタムシ亜科ノコギリクワガタでまちがいないだろう。体長4.8センチメートル。
クワガタの幼虫は、針葉樹が腐朽したものを食べる褐色腐朽材食性と、広葉樹が腐朽したものを食べる白色腐朽材食性などがあるそうだ。
褐色腐朽材食性のものは褐色腐朽材だけを食べ、白色腐朽材食性のものは褐色も白色も食べられるらしい。
褐色腐朽材食性のクワガタは進化の古い型だそうだから、針葉樹しかない時代に生きていたのが現代まで生き延びてきて、広葉樹が出てきたときに、進取性のあるものは新しい餌を開拓し、より大きくなり、より栄えたということらしい。
広葉樹はジュラ紀の頃出現したらしいから、恐竜のいた時代だ。昆虫はとっても古い生き物だというのが実感できる話だ。