今描いている珪藻は、STK-01(内湾)プレパラートのスケレトネマだ。まだ始めたばかりでおおまかなところを描いただけだが、完成しても見た印象はあまり変わらないように思う。むろん、ここで終わりにすると絵の具は薄いし、形もラフに描いてあるだけなので未完成感満載で、途中のものだよねとなるのだが、表現の大事なところは捉えられている。という具合に思うのだ。 何言っているのか分からんと言われそうだが、これ以上は良くならないばかりか描き続けると壊れていくように感じるのだ。 あるいは、薄っぺらな表面しか感じていない現れかも知れない。もっと深いものを感じなんとか表現しようとしていないことなのではないかと悩ましくも思うのだ。
甲虫目(鞘翅類)多食亜目(カブトムシ類)コガネムシ科カナブン。体長2.6センチメートル。 カナブンは大きくて見栄えのする甲虫だ。生きているのを捕まえたことはないが、道に転がっていたのを拾ってきたのが数匹いる。 体の金属光沢は死んでも変わらない。じっくり見て描けるわけだ。しかし、描くのは簡単ではない。 大きい昆虫だと言ってもデティールは眼に入ってこない。点刻は全く分からなくて、つるりとした表面だが実体顕微鏡を覗くと、いろいろ見えてくる。大きいのもあれば小さいのもあるし、シワシワ状に段になっているところもある。 そんなところまで表現していくと細かい描写が必要で技術がないと描けないし、とてつもなく時間がかかることにもなる。 この絵はそこら辺は手抜きをして、肉眼でみた感じに見えない点刻を少し入れて仕上げたものだ。
ロイコスフェニア(マガリクサビケイソウ)を帯面からみたものを前回載せたので、今回はどんな形をしているか調べてみた。 @はネットで見つけた電子顕微鏡写真を模写したもので、ばっちり写せたわけではないが、こんなものだろうという程度のものだ。 ABは殻面が上下ともある個体をさがして写したものだ。帯面のものは少ないとは言え見つけやすいが、殻面の上下そろったのはなかなかみつからない。しかしながら、散らしのMWS珪藻プレパラートの有り難みは大量の珪藻がマウントされているので、慎重に探していくと見つかるのだ。 凸面を上にしていた個体だったので、AのほうがBよりはっきり写った。縦溝が片方だけにあるのが特徴だそうで、Aは縦溝がないのが明確に分かるが、Bにある縦溝ははっきり写らなかったのは残念であるが異なる形状は確認できた。また、両端に隔室があるのもこの珪藻の特徴だそうだがBの右上を見るとそれらしいものが写っている。マガリクサビケイソウに間違いないことになるのだ。
MWS珪藻プレパラートSEK_01(小川 )に入っているロイコスフェニア(マガリクサビケイソウ)をウェブカメラで撮影したもの。 @がピントの最下段でAが最上段のものなので、@が下面をAが上面をみていることになるのだろう。ガラス質のものを顕微鏡で見ると常識では考えられないことが起こる。 解説本を見ると折れ曲がったくさび形は横から見た帯面で、上から見た殻面は長楕円型をしているそうなので、体が二つに割れずにそのままの形で封入されたものだと分かる。 どちらも両端より中央部が膨らんだ形にならなくてはいけないのだが、Aは平にしか見えない。ピント位置が体内に入り込んでいるとこれでもいいしなどと考えを巡らした。これより上でピント合わせをすると@の様なものが撮れるかも知れないが撮っていないのはピンぼけして使えないと思ったからだろう。 「あれこれ」に載せると考えが深くなっていいものである。
暖かいとヒラタアブとかハエとかが玄関先のカラーの葉に飛んでくる。冬でも昆虫はいるものだ。 7日は寒かったが、何かいるかなと見ていたら何もいない。がっかりしたがさらに目をこらすと先端に白点のついた小さな黒豆が目についた。それがこのハエだ。 シマバエの1種らしいが0.2センチくらいのかわいらしいもので初めて捕まえた。 じっとしてくれなくて、こちょこちょと動き回っているが、そこをなんとか撮影しスケッチにとったのだ。 小さいが見所は多い。 まず、複眼に模様がある。 触覚が真っ直ぐ伸びているのもめずらしい。 くの字型の姿勢は滅多に見ない。 それに合わせて翅が折れているのは初めて見た。 止まった時に前脚を互い違いにユックリ空を切るように動かすのもビックリだ。何かを探っているような感じもある。 いまも元気でいるので、まだ観察し記録できる。死んでしまえば別物になってしまうので貴重な時間だ。
ハエの種類はお手上げ状態で、なんだか少しも分からないハエ。しかし1センチくらいある細い体に、太く長い立派な脚を持っている変わったハエだ。似たようなものはあまり見かけない。 しばらく絵を載せていないので今回こそは絵だとばかり勇んだのであるが、根っこが怠け者でボーとしているのが性に合っている人なのでまたまた楽ちんしてしまった。
コンボウヤセバチの1種だそうだ。1.5センチぐらいだからまあまあの大きさだ。 我が家のテラス周りをのんびりと、飛ぶと言うより漂っている感じでうろうろしているのを見るのが毎夏の楽しみになっている。 初めて見た時は体を立てたまま漂っている変な虫と驚いた。正確さに自信はないが白丸の絵が 飛んでる時の姿だ。 短い産卵管の種類もいるようだが、こいつは長い産卵管でハナバチなどの巣に卵を産み付けるらしい。産卵管の長さが異なるのは寄生先の巣の深さとかで棲み分けているのかなとも思う。同じ場所でも寄生先は競合しないわけだ。昆虫の種類が多いのは、こんなところにも工夫を凝らしているからかなとも思うのだ。
少し前のことだが花の蜜やアブラムシの出す蜜を求めてだろうか玄関先のカラーの葉や近くの小花に寄ってきた。1.5センチもある大きめの虫だ。オオハナアブと言うみたいである。翅が2枚だし触覚を見ればハエの仲間だとすぐ分かる。 のんびりした虫なのか警戒心もなく採餌に夢中だったので難なく捕らえた。ハエの拡大顔はギョとさせられるのが多いが、この顔を見てなんだかとぼけていて、可愛らしいと思ってしまうのは私だけだとも思えないのだが。
知人が東京都美術館での展覧会に出品しているので見に行ったついでに国立科学博物館を覗いてきた。 手持ちでこんな写真が撮れるのも驚きだが、地球館1階「地球史ナビゲーター」で出迎えてくれたアロサウルスを写してきた。 古い記憶ではっきりしないが、昔の入り口は本館(日本館)の正面から入っていたように思う。玄関を入ると吹き抜けの大広間になっていて、そこにこのアロサウルスが出迎えてくれた。印象深かったのでアロサウルスははっきり覚えている。それも立ちポーズで足元から見上げるようになるので実に迫力があった。 いつしか日本館は脇役になり、アロサウルスのいた広間は後ろから入りアロサウルスも消えて寂しい思いをしていた。それが装いも新たに復活したわけだ。実に喜ばしい。 ところで、恐竜学の進歩で恐竜の姿勢は大きく変わって、尻尾が地に着くような立ち姿から、頭から尻尾まで水平に体を伸ばした躍動感溢れるものになっている。これはこれで素晴らしいが、昔から見ているじいさんとしてはゴジラ並の立ち姿も良いものだったと思うのである。
友人が遊びに来たのでちっこいハチの複眼を金属顕微鏡で見てもらった。 熱心に覗いて感心してくれたので、今回は複眼がどう見えるか見てもらおうというわけだ。 アブラムシに寄生するコマユバチの1種ではないかと思うが、体長0.25センチメートルの小さなハチだ。 下が金属顕微鏡の写真だが、真上からの落射照明なので水平面は白く光り、傾斜している面は黒くなる。すべての昆虫が同様の複眼とは限らないが、このハチはピッタリくっついた複眼ではなく、互いに少し離れているのと、表面が盛り上がっている特徴を見分けることができるのだと思うのだ。
前回に引き続きスケレトネマの画像だ。こちらの方がより円筒状に写っている。 影がはっきり出る方向と、出ない方向があるので偏斜の方向は明確のようにも見えるが、よく見ると矛盾しているところもある。金色っぽいのも普段は見ることがないので、これも不思議なことだ。 光学の知識は無し、解明の手段も気力もないが、いじくり回していると幸運の女神が微笑んでくれると言うことだろうか。
ここのところ、MWSの「本日の画像」は微分干渉法の顕微鏡写真のオンパレードになっている。小生はそのような高級機材は持っていないので真似することは出来ない。しかし、ちょっと不思議な写真が撮れたので紹介したい。 東京湾でとれたスケレトネマが沢山入っているSTK-01(内湾)プレパラートの端にわずかに封入剤がまわらずに気泡があった。初めからあったのか、取り扱いが悪くてできたのかはっきりしないが、両者にまたがっている珪藻を撮影したのが今日の画像だ。 右上が封入剤がまわっている部分、左下の立体感あふれるものが気泡の中だ。円筒形の珪藻なので、真円に写っていないのはおしいが、見たことのない吃驚の画像だ。 顕微鏡は古くさいオリンバスFHAであるが。コンデンサが偏斜照明ができるので、輪帯照明の自作アタッチメントと併用した、偏斜輪帯照明の画像だ。何故こうなるのか、さっぱりであるが楽しい絵が撮れた。
「大陸地殻進化論序説」の付録2は、「わがカコウ岩史を語る」で大正生まれの岩石学者の歩みが書かれている。 子供のころから岩石好きで、家庭の事情で高等師範の理科3部(博物学)に入り、弘前中学教諭、旧満州国新京工業大学助教授、東京文理科大学助手、講師から東京教育大学教授の経歴で、教育と研究一筋の人だ。 独創性という点から、わりといい線をいった二つの仕事として、終戦前後ころにやった斜長石双晶法と、60年ころ始めた同位体岩石学を上げている。 前者は、現地の踏査と標本収集、そして切片をつくり顕微鏡観察の地道な作業をしている内に斜長石の双晶の違いが、カコウ岩の成因解明の鍵としてさらに深く研究を進め、海外からも素性のはっきりした標本をとりよせるなど約二千の双晶測定をして、ユニバーサルステージのガラス半球を埋め込むネジ穴がすりへって使えなくなり付け直したほど顕微鏡を覗きまくったらしいが、その成果は火成なのか変成して出来たのか判定できるようになり、「斜長石双晶の牛来」となったそうだ。 後者は、火成岩の成因に関心が移って、多数の標本の微量元素成分割合を調べまくって研究の方向性を確信し、ついで、やっている人がほとんどいない同位体を有力な手法として手を付けたそうだ。同位体岩石学は今では実験岩石学とともに岩石成因論の大きな柱になっているそうである。 この本に書かれている内容は分からないことばかりであるが、付録2はおもしろかった。 学術書や論文からの知識は勿論であるが、現地踏査と標本の顕微鏡観察や成分分析を多数積み上げ、大きな構成が組み上がっていく様がなんとなく感じられる。千里の道も一歩からではないが、細心な観察の小さな積み重ねが大きな成果を生み出すわけだ。 とはいえ、序論の段階で2002年に牛来先生は亡くなられ同調者も少ないようだし、この説はこれから先どのようになっていくのだろうか。半世紀も経てばウェゲナーのようになるのであろうか。
1990年12月に発行された牛来正夫著「大陸地殻進化論序説」の、表紙カバーに載せてある絵である。この絵は本文の中で使われているもので、古生代初期ころのローレンシアの位置についての諸説の説明図だ。 今の世は「地球博物館」の展示を見ても、NHKの科学番組でも、プレートテクトニクスで地球の歴史は決まりみたいに受け止めさせられる。 ところがこの先生はそれに反対の地球膨張説で、プレートテクトニクスをとおしての"大陸移動"ではなく、膨張による"大陸放散"がおこったという考え方である。プレートテクトニクスだと大陸移動を繰り返して大陸面積が拡大したと考えるらしいのだが、この先生はそうではなく一割程度しか増えない大陸地殻進化の道のりというのでこの本を書いたわけだ。 この本を読むと、例えば地球初期のマグマオーシャンも全面溶けていたものから部分溶融まで、いろんな説が紹介されていて、多くのことが諸説紛々の印象を受けた。この本が発行されてから26年経っていて最近の進歩は眼を見張るものがあるようだが、地球の歴史を確定するのはまだまだで、ノー天気に世に吹聴される説を信じ込んではいけない。ということを考えさせる本であった。
甲虫目(鞘翅類)多食亜目(カブトムシ類)ハムシ上科カミキリムシ科カミキリ亜科タケトラカミキリか?体長1.6センチメートル。 カミキリムシというと大アゴが頭の下にあるフトカミキリムシ亜科のものを思い浮かべるのであるが、こいつは前に突き出している。 一口にカミキリムシというがいろんなのがいるわけだ。 漢字で書くと髪切虫とか噛切り虫とかがあるが、天牛というのもある。 中国名で、長い触覚を牛の角に見立てたそうだが、なんかおおらかでいいよねーと思ってしまうのだ。
砂利をひいた入れ物に三匹のハマアシナガアリを入れて黒砂糖の粉をあげたら一匹が早速大アゴを開いてくわえた。そのうちに乾燥していたものがしめってきて、どろどろ状態になったところで別のアリがお裾分けにありつこうと寄ってきた。口の茶色がどろどろの黒砂糖で少し分けてもらったところだ。 そこの所を撮影し、アリの部分だけを鉛筆画に変えたのが今日の画像だ。小粒の砂利だがアリにとっては巨岩である。それでも何の苦もなく動き回っている。この細長い六本脚の威力は大したものだ。
昆虫単体では絵としては物足りないものがある。生態系の中にいれてありのままに描くのが常識的だろう。 日本画の花鳥画は良いお手本であるし、最近人気が過熱している若冲なんかは御物になっているシリーズ画がある。 B級映画だと巨大化した昆虫が大暴れなんてのもあった。円谷特撮の「モスラ」「空の大怪獣ラドン」は子供の時に見たが、筑豊炭鉱の謎の殺人で幼虫のモスララドンが登場する所などは密閉空間の暗闇に姿がなかなか現れず恐怖を感じたものだ。 といふわけで手持ちの材料をいじってみたのが今日の画像である。
ハチ(膜翅)目スズメバチ上科スズメバチ科 ドロバチ亜科チビドロバチかもしれない。体長1.1センチメートル。 黒に黄色の飾りを付けた甲冑に身を固めた狩人バチ。1センチ位で小さなものだが精悍な感じがする。触覚の手入れをしているのを動画に撮ったので、いくつか止めた画像をスケッチした。後ろ脚4本で上体を持ち上げ前脚を触覚にあてて振り下ろすという単純なやり方だ。 動画からではデティールが見えなくて物足りなかったので頭部のスケッチをした。 りっぱな大アゴだが凝った形をしていた。獲物を毒針で麻痺させるのにくわえて動けなくしなくてはいけないのだろうが、それに都合が良いようになっているのだろう。
甲虫目(鞘翅類)多食亜目(カブトムシ類)ゾウムシ上科チョッキリゾウムシ科ケシツブチョッキリ族のクロケシツブチョッキリ。体長0.3センチメートル。 族まで書けたのはめずらしいが、詳しく解説したサイトを見つけたからだ。バラの著名な害虫とあり写真もでていた。バラについていたのを捕まえたし写真もそれらしく見えたので間違いないようだ。 チョッキリの産卵法は茎や実に産卵する簡単なものからオトシブミのように葉で揺籃を作るものまで多岐にわたっているそうだが、この族は、新芽、つぼみ、茎に産卵し、産卵部の下方に穴をあけたり切ったりして産卵部分を枯れ死させる原初的なものだと書いてあった。動かないと眼に入らないような小さなものだが、バラにとっては大敵なのだろう。 それにしても前脚が長くて頭を上げたポーズがかわいらしいムシだ。
ハチ(膜翅)目ハナバチ上科ミツバチ科コハナバチ亜科なんとかコハナバチ。体長0.7センチメートル。 8月に庭の花に来たものを捕まえたものだが、黒いころころした小さなハチでかわいいものだ。 8月25日に写真を載せたものと同じかと思ったが、脛節と附節が薄い橙だし、大アゴも鋭いので違う種類だった。 こういうのが分かると、一寸目では区別の付かないのがゴロゴロしているのが昆虫なのだなと改めて思うのだ。
ハエ違いだがヒラタアブの翅のつけ根がどうなっているかを調べてみた。 翅の構造材とも言える翅脈の内、特に強固な前縁脈と亜前縁脈が翅の動きで重要な働きをしていると思う。 この先端は、固い材料と柔らかいものと複雑に組み合わされている。(背板の一部と翅脈が透明でピンクに染色されているが、それ以外のピンク部分が柔らかい膜状のところだろう。) 背板とは二ヶ所で接続しているようだ。ここで上下の動きを直接受けるのだろう。そして、側板接続部との位置の違いが上下運動をはばたきに変えているのだろうが、そこまでは見分けられなかった。 前縁脈と鱗弁は筋肉が接続しているみたいで、いろいろな動きができるようだ。実際、翅を前に持ってきたり後ろに納めたりしなくてはいけないし、羽ばたく時も微妙な動きがハエの素晴らしい機敏さもたらしているのだろうから動きを制御する筋肉はどうしたって必要だ。そして、それら全ての動きを可能にしているのが、このつけ根の硬軟組み合わせた構造なのだろうかと思うと興奮してくるが確かめるのはたいへんだ。
「昆虫の生態図鑑」から、翅はどのように動くかの模式図を載せたが、解説では 「昆虫が飛んでいる時の翅の動きは、たいへん複雑で、しかも、昆虫の種類によっても、ちがいます。それは胸と翅のつながりかたが、じっさいは、いまのべたことよりずっと複雑だからです。機械のすきな人だったら、昆虫の翅のつけ根がどうなっているかを、よく調べてみるとおもしろいでしょう。」 となっていて、自然界は簡単ではないことが述べてある。 それではと、解剖したものをスケッチしたのが上段の絵だが、これでは何が何だかサッパリなので色分けした。 翅の下に団扇みたいな2枚重ねの鱗弁というのがあってわかりにくい上に、側板も硬質と膜質部分があって、やけに複雑だねとなってお手上げ状態だ。
ハエの胸部は筋肉で充ち満ちていて、飛行用の背腹の筋肉とたての筋肉は太く整然と並んでいる。 その2種類の筋肉を互い違いに収縮させて腹部振動し、それで翅が動くという仕組みだそうだ。 気門は前と後ろに2組ある。前にあるのが長く大きい。そしてここのところに背腹の筋肉がないので気嚢があるのかもしれない。潰れたのか確認できなかった。 筋肉に薄く汚れたような筋がかろうじて見えるが、これは膜状だが気管だと思う。激しい動きをするわけだから大量の酸素が必要だ。それにしては気管が少ないなと思われようが、本当は細かいピッチで整然と付いているのだがうまく残せなかったのだ。 食道、唾液腺、神経、血管と気管が首で頭とつながっているが、食道と神経だけがかろうじて分かった。針を潰したような自作のメスだが切れ味がもっと良くならないといけないし、切る位置とか順番もよく考えないといつまでたっても見分けられないで終わりそうだ。
昆虫の体の中は図鑑など見ても実感が湧かないが、それではと解剖してみると図のように整然としているわけでもなく何が何だか分からなくなるものだ。 ハエの腹部前部は大きな気嚢が二つ並んでいるが、初めの頃は腹を開くときに潰してしまって空洞があるくらいにしか理解できなくて気嚢ということに気がつかない暢気さだった。 水中で解剖すると元の形が分かりやすいのに気がついて初めて気嚢がどんなものかはっきり眼にしたわけだ。 昆虫の呼吸は腹部と胸部の多数の気門からで、口からではないが、ハエなどは空気を溜め込む巨大な空間も確保しているわけだ。これから先は気管が網状に各器官に広がっていて空気のやりとりをしているわけだが、下の写真でも太目のものの一部が見えている。その先がだんだん細く複雑になっていくわけだ。 栄養分と排泄物はたっぷりの体液で循環させていると思っていたが、腹部は消化管と生殖器にこの気嚢でびっしり詰まっているし、胸はほとんど筋肉みたいだし、頭部も脳や口器に気嚢もあって隙間は少ないようだ。意外に少量の体液を効率よく使っているのかもしれない。
フタフシアリ属のハマアシナガアリのようだ。体長0.6センチメートル。 真鶴半島の付け根は岩場に遊歩道があって夏はバーベキューなどで賑わっている。そこで捕まえた。細長くて頭と腹はやや黒いが胸は赤っぽい中型のアリだ。脚の長いアリだが海岸が生活の場で岩の隙間などで生活しているらしい。 前回、短い脚で穴を掘って生活しているのも肯ける。と書いたが地中生活者でも長い脚のアリもいるしで世界はひろい。いろいろだ。 ところで、このアリは右前脚は腿節の根元で、後脚は先端で切断されていた。図の手前側は三本の脚があるが、向側は矢印の一本しかない。傷口は古そうだったので、これでかなり生きてきているのだろう。よくこれで生き抜いてきたとじわっと来るものがあるが、絵の素材になったことで成仏してもらおう。
コハナバチ科の一種みたいだが、花に飛んできて盛んに花粉を体につけ蜜も吸っているようだし、胸とか脚のフサフサした棘毛をみれば蜜蜂系はすぐ分かる。こいつは0.5センチくらいで小さいのだが、よく似た感じで1センチくらいのも良く来る。 蜜蜂=集団生活のイメージだったが、こいつらは地中に単独で営巣し花粉と蜜を蓄えその上に卵を産み付けるそうだ。 ズングリした体、短い脚、シャベルのような大アゴを見ると、確かに穴を掘って生活しているのも肯ける。
最近のネットでは地形図と標高データを組み合わせて鳥瞰図を作ることも出来る。標高データは5メートルメッシュのもあるので驚くべき詳細さだ。しかも、断面図まで簡単にできるので立体図では読み取りにくい部分も理解しやすい。 図は大磯、二宮間で二宮に近いところだ。大磯丘陵南端の平地であるが、海抜10メートルぐらいはある。葛川が北から南下しているが、海岸線の15メートルほどの高まりで東へ向きを変えている。 Aは明治時代のものだが、標高は鉄道や住宅地で削られている現代のもので当時とは異なるのを頭に入れて見ないといけないが、東海道沿いに集落がある他は田や畑で葛川の南は荒れ地だったようだ。江戸時代もたいして変わらないどころか室町時代でも似たようなものかも知れない。などと思って眺めた。 しかし今は海岸線に沿って西湘バイパスが通り、葛川南の荒れ地はゴルフ場と大磯ロングビーチで大変な変わり様だ。 西湘バイパス、国道一号線はよく利用し、東海道線は毎日のように通って窓の景色はなじみ地形図も好きでよく見たが、この鳥瞰図を見るとなにも理解してなかったのがよく分かった。 なにごともそうなんだろうなとも思う。沢山情報に接して全体像を捕まえたように思ってるのだが、実はほんの一面だけしか見ていないのだ。
9月第一週は都美術館で新作家展がある。その出品作だ。 ARK-01(干潟)のニッチア一本をF120の中央に置いただけというものは、手抜きの絵だと見る人がほとんどだろうなと思う。 それでもめげないで単純化に努めているわけで、立ち止まってユックリと見てくれる人がでてきますようにというのが今の望みだ。
御浦風物誌にヒゲブトオサムシの標本画がたくさんでていた。ここ どれも似ていて一寸見では区別がつかない。じっと見て較べると些細な違いが見えてくる。それを重ねていくとだんだん違いが大きく見えてくると言う案配だ。 九州大学総合研究博物館のMさんからの依頼だそうだ。19種を一度に描くので、一枚ずつ仕上げたのでは初めと終わりでは仕上がりに差が出るため平行して描いたそうだ。名人のされることは毎度唸らせられます。 依頼主はイニシャルで紹介されていたが、「断虫亭日乗」というブログで論文完成の紹介がされていて、ここ すべての全形図を世界一の標本画家に依頼したとあった。丸山宗利研究室がリンクされていて、Mさんは丸山宗利教授だとわかる。 世界一の標本画家は、ほんとかどうか小生には判断する力はないが、そうだろうなとも思う。 それらの画に刺激をうけたわけでもないが、前回のハンミョウを形の正確さを第1にして鉛筆で描いた。写真からでなく実体顕微鏡を覗きながら直に描いたものだが、落ち着いて写真と比べると実体顕微鏡は右と左ではえらく違っているせいもあるのだが、正確に見ていないのがはっきり分かる突っ込みどころ満載の絵になってしまった。
この間のハンミョウを標本化したので写真に撮り深度合成した。 動かないから深度合成できるわけだが、重なっている所など具合の悪いヶ所も多くて修正に手間取ったし、照明も後方からなので不満足な出来だが、なんとかそれらしく出来た。 ハンミョウは正面の獰猛な顔だよね。といつも思っているが、複眼の大きさとか大あごの形や大きさは、いかにもハンターだ。手掴みしたことはないので挟まれたことはないが、これに挟まれると相当な痛みだという話だ。
MWSのACC_01(南極)に入っているアステロランプラ属と思われる珪藻。 2009年3月の「本日の画像」にこいつの画像がでて、「研究者でも入手困難な、南極海の海底に沈んでいた珪藻をプレパラートにした。」と言うことだったのでさっそく求めて撮影した。 上はその時のもので、本家のようには撮れないのは当たり前としても、それに近づけようと工夫を凝らしたものだ。 どんな照明をしたか、さっぱり思い出せないが、平板なものが立体を感じるものに変わったのだけは確かだ。 下は最近ウェッブカメラで撮った物。まともなカメラと比較すると荒い画像で恐縮するが、裏の骨組みの様子が分かりやすいと思う。海底に沈んでいる間に壊れたのか、奇形か、判然としないが、上のような整然さがない。普通の人は好まない画像だろうが小生はこんなのに心引かれてしまうのだ。
コウチュウ(鞘翅)目オサムシ上科ハンミョウ科コニワハンミョウかトウキョウヒメハンミョウかもしれない。体長1センチメートル。 ハンミョウはカラフルなものが有名だが、こいつは肉眼では焦げ茶色の地味なものだ。ところが実体顕微鏡下では、赤銅の鎧に、にぶく光る金や青がなかなかに美しい。 どんな生活をしているのか、さっぱり分からないが、6,7月頃我が家の周りにあらわれる。見つけても素早く飛び退き捕まえるのは難しいものだが、住み着いているようで逃しても日が改まると捕まえられたりして、いくつかは持っている。 スケッチしたのは6年前に捕まえたものだし、写真はついこの間捕まえたものだ。
スズメバチやアシナガバチは飛んでないときは翅は棒のような感じで腹部の上にちょこんと納まっている。 前回の絵でそうなるか試してみた。 @の赤線が大体の中央に当たるから、ここで二つに折れればよいわけだ。 左翅は旨い具合に翅脈のところだったが、右翅は翅脈が二つに別れるところで赤線に当たってしまった。 こんなところが勘所で、ちゃんと理解してないことが露わになるわけだ。 ところで、大型のハチは下翅の前縁にある何本かの爪を上翅の後縁のめくれたところに引っかけて、一体化した翅で飛んでいるが、さらに降りるとコンパクトに畳んでいるのには、全く大したものだと感心させられるのだ。
ハチ(膜翅)目細腰亜目スズメバチ科ヒメスズメバチ。体長3センチメートル。 御浦風物誌にキイロスズメバチの巨大巣をオオスズメバチの集団が襲撃中の体験記事が載っていた。ここ スズメバチは意外にも返り討ちにあって、犠牲者は次々とその姉妹たちに噛み砕かれ、肉団子へと姿を変えて、出立した巣へと帰ってゆくのだそうだが、肉団子にしている写真が掲載されている。さすがに専門家のサイトだけあって、短文ではあるが情報量も多く密度の濃いものだ。 ところで、小生もスズメバチの標本を持っている。オオのつくのはなくて、ヒメとかモンとかしかつかないのは残念なのであるが。
5月から始めた絵の完成だ。残滓と名付けた。 廃墟でもよかったかもしれない。 破壊された跡を現しているわけだ。 無残な気分が漂っているのが感じられるか、感じられないかが成否の分かれ目だろう。 それにはエネルギッシュに細かく細かくと描き込んでいくのはちと拙いかなと思えたので、じっくり見て筆の動きはすくなくした。 そのかわり何度も乾かしては塗り重ねる薄い絵の具の層が明暗と深みを生み出し、荒いタッチも離れて見るとリアルさを示してくる。 それが絵の力となって見る人になにかを感じさせる。 そうなっていると良いのだが。 はかない願望だ。
2016.12.30
今描いている珪藻は、STK-01(内湾)プレパラートのスケレトネマだ。まだ始めたばかりでおおまかなところを描いただけだが、完成しても見た印象はあまり変わらないように思う。むろん、ここで終わりにすると絵の具は薄いし、形もラフに描いてあるだけなので未完成感満載で、途中のものだよねとなるのだが、表現の大事なところは捉えられている。という具合に思うのだ。
何言っているのか分からんと言われそうだが、これ以上は良くならないばかりか描き続けると壊れていくように感じるのだ。
あるいは、薄っぺらな表面しか感じていない現れかも知れない。もっと深いものを感じなんとか表現しようとしていないことなのではないかと悩ましくも思うのだ。
2016.12.25
甲虫目(鞘翅類)多食亜目(カブトムシ類)コガネムシ科カナブン。体長2.6センチメートル。
カナブンは大きくて見栄えのする甲虫だ。生きているのを捕まえたことはないが、道に転がっていたのを拾ってきたのが数匹いる。
体の金属光沢は死んでも変わらない。じっくり見て描けるわけだ。しかし、描くのは簡単ではない。
大きい昆虫だと言ってもデティールは眼に入ってこない。点刻は全く分からなくて、つるりとした表面だが実体顕微鏡を覗くと、いろいろ見えてくる。大きいのもあれば小さいのもあるし、シワシワ状に段になっているところもある。
そんなところまで表現していくと細かい描写が必要で技術がないと描けないし、とてつもなく時間がかかることにもなる。
この絵はそこら辺は手抜きをして、肉眼でみた感じに見えない点刻を少し入れて仕上げたものだ。
2016.12.20
ロイコスフェニア(マガリクサビケイソウ)を帯面からみたものを前回載せたので、今回はどんな形をしているか調べてみた。
@はネットで見つけた電子顕微鏡写真を模写したもので、ばっちり写せたわけではないが、こんなものだろうという程度のものだ。
ABは殻面が上下ともある個体をさがして写したものだ。帯面のものは少ないとは言え見つけやすいが、殻面の上下そろったのはなかなかみつからない。しかしながら、散らしのMWS珪藻プレパラートの有り難みは大量の珪藻がマウントされているので、慎重に探していくと見つかるのだ。
凸面を上にしていた個体だったので、AのほうがBよりはっきり写った。縦溝が片方だけにあるのが特徴だそうで、Aは縦溝がないのが明確に分かるが、Bにある縦溝ははっきり写らなかったのは残念であるが異なる形状は確認できた。また、両端に隔室があるのもこの珪藻の特徴だそうだがBの右上を見るとそれらしいものが写っている。マガリクサビケイソウに間違いないことになるのだ。
2016.12.15
MWS珪藻プレパラートSEK_01(小川 )に入っているロイコスフェニア(マガリクサビケイソウ)をウェブカメラで撮影したもの。
@がピントの最下段でAが最上段のものなので、@が下面をAが上面をみていることになるのだろう。ガラス質のものを顕微鏡で見ると常識では考えられないことが起こる。
解説本を見ると折れ曲がったくさび形は横から見た帯面で、上から見た殻面は長楕円型をしているそうなので、体が二つに割れずにそのままの形で封入されたものだと分かる。
どちらも両端より中央部が膨らんだ形にならなくてはいけないのだが、Aは平にしか見えない。ピント位置が体内に入り込んでいるとこれでもいいしなどと考えを巡らした。これより上でピント合わせをすると@の様なものが撮れるかも知れないが撮っていないのはピンぼけして使えないと思ったからだろう。
「あれこれ」に載せると考えが深くなっていいものである。
2016.12.10
暖かいとヒラタアブとかハエとかが玄関先のカラーの葉に飛んでくる。冬でも昆虫はいるものだ。
7日は寒かったが、何かいるかなと見ていたら何もいない。がっかりしたがさらに目をこらすと先端に白点のついた小さな黒豆が目についた。それがこのハエだ。
シマバエの1種らしいが0.2センチくらいのかわいらしいもので初めて捕まえた。
じっとしてくれなくて、こちょこちょと動き回っているが、そこをなんとか撮影しスケッチにとったのだ。
小さいが見所は多い。
まず、複眼に模様がある。
触覚が真っ直ぐ伸びているのもめずらしい。
くの字型の姿勢は滅多に見ない。
それに合わせて翅が折れているのは初めて見た。
止まった時に前脚を互い違いにユックリ空を切るように動かすのもビックリだ。何かを探っているような感じもある。
いまも元気でいるので、まだ観察し記録できる。死んでしまえば別物になってしまうので貴重な時間だ。
2016.12.05
ハエの種類はお手上げ状態で、なんだか少しも分からないハエ。しかし1センチくらいある細い体に、太く長い立派な脚を持っている変わったハエだ。似たようなものはあまり見かけない。
しばらく絵を載せていないので今回こそは絵だとばかり勇んだのであるが、根っこが怠け者でボーとしているのが性に合っている人なのでまたまた楽ちんしてしまった。
2016.11.30
コンボウヤセバチの1種だそうだ。1.5センチぐらいだからまあまあの大きさだ。
我が家のテラス周りをのんびりと、飛ぶと言うより漂っている感じでうろうろしているのを見るのが毎夏の楽しみになっている。
初めて見た時は体を立てたまま漂っている変な虫と驚いた。正確さに自信はないが白丸の絵が 飛んでる時の姿だ。
短い産卵管の種類もいるようだが、こいつは長い産卵管でハナバチなどの巣に卵を産み付けるらしい。産卵管の長さが異なるのは寄生先の巣の深さとかで棲み分けているのかなとも思う。同じ場所でも寄生先は競合しないわけだ。昆虫の種類が多いのは、こんなところにも工夫を凝らしているからかなとも思うのだ。
2016.11.25
少し前のことだが花の蜜やアブラムシの出す蜜を求めてだろうか玄関先のカラーの葉や近くの小花に寄ってきた。1.5センチもある大きめの虫だ。オオハナアブと言うみたいである。翅が2枚だし触覚を見ればハエの仲間だとすぐ分かる。
のんびりした虫なのか警戒心もなく採餌に夢中だったので難なく捕らえた。ハエの拡大顔はギョとさせられるのが多いが、この顔を見てなんだかとぼけていて、可愛らしいと思ってしまうのは私だけだとも思えないのだが。
2016.11.20
知人が東京都美術館での展覧会に出品しているので見に行ったついでに国立科学博物館を覗いてきた。
手持ちでこんな写真が撮れるのも驚きだが、地球館1階「地球史ナビゲーター」で出迎えてくれたアロサウルスを写してきた。
古い記憶ではっきりしないが、昔の入り口は本館(日本館)の正面から入っていたように思う。玄関を入ると吹き抜けの大広間になっていて、そこにこのアロサウルスが出迎えてくれた。印象深かったのでアロサウルスははっきり覚えている。それも立ちポーズで足元から見上げるようになるので実に迫力があった。
いつしか日本館は脇役になり、アロサウルスのいた広間は後ろから入りアロサウルスも消えて寂しい思いをしていた。それが装いも新たに復活したわけだ。実に喜ばしい。
ところで、恐竜学の進歩で恐竜の姿勢は大きく変わって、尻尾が地に着くような立ち姿から、頭から尻尾まで水平に体を伸ばした躍動感溢れるものになっている。これはこれで素晴らしいが、昔から見ているじいさんとしてはゴジラ並の立ち姿も良いものだったと思うのである。
2016.11.15
友人が遊びに来たのでちっこいハチの複眼を金属顕微鏡で見てもらった。
熱心に覗いて感心してくれたので、今回は複眼がどう見えるか見てもらおうというわけだ。
アブラムシに寄生するコマユバチの1種ではないかと思うが、体長0.25センチメートルの小さなハチだ。
下が金属顕微鏡の写真だが、真上からの落射照明なので水平面は白く光り、傾斜している面は黒くなる。すべての昆虫が同様の複眼とは限らないが、このハチはピッタリくっついた複眼ではなく、互いに少し離れているのと、表面が盛り上がっている特徴を見分けることができるのだと思うのだ。
2016.11.10
前回に引き続きスケレトネマの画像だ。こちらの方がより円筒状に写っている。
影がはっきり出る方向と、出ない方向があるので偏斜の方向は明確のようにも見えるが、よく見ると矛盾しているところもある。金色っぽいのも普段は見ることがないので、これも不思議なことだ。
光学の知識は無し、解明の手段も気力もないが、いじくり回していると幸運の女神が微笑んでくれると言うことだろうか。
2016.11.05
ここのところ、MWSの「本日の画像」は微分干渉法の顕微鏡写真のオンパレードになっている。小生はそのような高級機材は持っていないので真似することは出来ない。しかし、ちょっと不思議な写真が撮れたので紹介したい。
東京湾でとれたスケレトネマが沢山入っているSTK-01(内湾)プレパラートの端にわずかに封入剤がまわらずに気泡があった。初めからあったのか、取り扱いが悪くてできたのかはっきりしないが、両者にまたがっている珪藻を撮影したのが今日の画像だ。
右上が封入剤がまわっている部分、左下の立体感あふれるものが気泡の中だ。円筒形の珪藻なので、真円に写っていないのはおしいが、見たことのない吃驚の画像だ。
顕微鏡は古くさいオリンバスFHAであるが。コンデンサが偏斜照明ができるので、輪帯照明の自作アタッチメントと併用した、偏斜輪帯照明の画像だ。何故こうなるのか、さっぱりであるが楽しい絵が撮れた。
2016.10.30
「大陸地殻進化論序説」の付録2は、「わがカコウ岩史を語る」で大正生まれの岩石学者の歩みが書かれている。
子供のころから岩石好きで、家庭の事情で高等師範の理科3部(博物学)に入り、弘前中学教諭、旧満州国新京工業大学助教授、東京文理科大学助手、講師から東京教育大学教授の経歴で、教育と研究一筋の人だ。
独創性という点から、わりといい線をいった二つの仕事として、終戦前後ころにやった斜長石双晶法と、60年ころ始めた同位体岩石学を上げている。
前者は、現地の踏査と標本収集、そして切片をつくり顕微鏡観察の地道な作業をしている内に斜長石の双晶の違いが、カコウ岩の成因解明の鍵としてさらに深く研究を進め、海外からも素性のはっきりした標本をとりよせるなど約二千の双晶測定をして、ユニバーサルステージのガラス半球を埋め込むネジ穴がすりへって使えなくなり付け直したほど顕微鏡を覗きまくったらしいが、その成果は火成なのか変成して出来たのか判定できるようになり、「斜長石双晶の牛来」となったそうだ。
後者は、火成岩の成因に関心が移って、多数の標本の微量元素成分割合を調べまくって研究の方向性を確信し、ついで、やっている人がほとんどいない同位体を有力な手法として手を付けたそうだ。同位体岩石学は今では実験岩石学とともに岩石成因論の大きな柱になっているそうである。
この本に書かれている内容は分からないことばかりであるが、付録2はおもしろかった。
学術書や論文からの知識は勿論であるが、現地踏査と標本の顕微鏡観察や成分分析を多数積み上げ、大きな構成が組み上がっていく様がなんとなく感じられる。千里の道も一歩からではないが、細心な観察の小さな積み重ねが大きな成果を生み出すわけだ。
とはいえ、序論の段階で2002年に牛来先生は亡くなられ同調者も少ないようだし、この説はこれから先どのようになっていくのだろうか。半世紀も経てばウェゲナーのようになるのであろうか。
2016.10.25
1990年12月に発行された牛来正夫著「大陸地殻進化論序説」の、表紙カバーに載せてある絵である。この絵は本文の中で使われているもので、古生代初期ころのローレンシアの位置についての諸説の説明図だ。
今の世は「地球博物館」の展示を見ても、NHKの科学番組でも、プレートテクトニクスで地球の歴史は決まりみたいに受け止めさせられる。
ところがこの先生はそれに反対の地球膨張説で、プレートテクトニクスをとおしての"大陸移動"ではなく、膨張による"大陸放散"がおこったという考え方である。プレートテクトニクスだと大陸移動を繰り返して大陸面積が拡大したと考えるらしいのだが、この先生はそうではなく一割程度しか増えない大陸地殻進化の道のりというのでこの本を書いたわけだ。
この本を読むと、例えば地球初期のマグマオーシャンも全面溶けていたものから部分溶融まで、いろんな説が紹介されていて、多くのことが諸説紛々の印象を受けた。この本が発行されてから26年経っていて最近の進歩は眼を見張るものがあるようだが、地球の歴史を確定するのはまだまだで、ノー天気に世に吹聴される説を信じ込んではいけない。ということを考えさせる本であった。
2016.10.20
甲虫目(鞘翅類)多食亜目(カブトムシ類)ハムシ上科カミキリムシ科カミキリ亜科タケトラカミキリか?体長1.6センチメートル。
カミキリムシというと大アゴが頭の下にあるフトカミキリムシ亜科のものを思い浮かべるのであるが、こいつは前に突き出している。
一口にカミキリムシというがいろんなのがいるわけだ。
漢字で書くと髪切虫とか噛切り虫とかがあるが、天牛というのもある。
中国名で、長い触覚を牛の角に見立てたそうだが、なんかおおらかでいいよねーと思ってしまうのだ。
2016.10.15
砂利をひいた入れ物に三匹のハマアシナガアリを入れて黒砂糖の粉をあげたら一匹が早速大アゴを開いてくわえた。そのうちに乾燥していたものがしめってきて、どろどろ状態になったところで別のアリがお裾分けにありつこうと寄ってきた。口の茶色がどろどろの黒砂糖で少し分けてもらったところだ。
そこの所を撮影し、アリの部分だけを鉛筆画に変えたのが今日の画像だ。小粒の砂利だがアリにとっては巨岩である。それでも何の苦もなく動き回っている。この細長い六本脚の威力は大したものだ。
2016.10.10
昆虫単体では絵としては物足りないものがある。生態系の中にいれてありのままに描くのが常識的だろう。
日本画の花鳥画は良いお手本であるし、最近人気が過熱している若冲なんかは御物になっているシリーズ画がある。
B級映画だと巨大化した昆虫が大暴れなんてのもあった。円谷特撮の「モスラ」「空の大怪獣ラドン」は子供の時に見たが、筑豊炭鉱の謎の殺人で幼虫のモスララドンが登場する所などは密閉空間の暗闇に姿がなかなか現れず恐怖を感じたものだ。
といふわけで手持ちの材料をいじってみたのが今日の画像である。
2016.10.05
ハチ(膜翅)目スズメバチ上科スズメバチ科 ドロバチ亜科チビドロバチかもしれない。体長1.1センチメートル。
黒に黄色の飾りを付けた甲冑に身を固めた狩人バチ。1センチ位で小さなものだが精悍な感じがする。触覚の手入れをしているのを動画に撮ったので、いくつか止めた画像をスケッチした。後ろ脚4本で上体を持ち上げ前脚を触覚にあてて振り下ろすという単純なやり方だ。
動画からではデティールが見えなくて物足りなかったので頭部のスケッチをした。
りっぱな大アゴだが凝った形をしていた。獲物を毒針で麻痺させるのにくわえて動けなくしなくてはいけないのだろうが、それに都合が良いようになっているのだろう。
2016.09.30
甲虫目(鞘翅類)多食亜目(カブトムシ類)ゾウムシ上科チョッキリゾウムシ科ケシツブチョッキリ族のクロケシツブチョッキリ。体長0.3センチメートル。
族まで書けたのはめずらしいが、詳しく解説したサイトを見つけたからだ。バラの著名な害虫とあり写真もでていた。バラについていたのを捕まえたし写真もそれらしく見えたので間違いないようだ。
チョッキリの産卵法は茎や実に産卵する簡単なものからオトシブミのように葉で揺籃を作るものまで多岐にわたっているそうだが、この族は、新芽、つぼみ、茎に産卵し、産卵部の下方に穴をあけたり切ったりして産卵部分を枯れ死させる原初的なものだと書いてあった。動かないと眼に入らないような小さなものだが、バラにとっては大敵なのだろう。
それにしても前脚が長くて頭を上げたポーズがかわいらしいムシだ。
2016.09.25
ハチ(膜翅)目ハナバチ上科ミツバチ科コハナバチ亜科なんとかコハナバチ。体長0.7センチメートル。
8月に庭の花に来たものを捕まえたものだが、黒いころころした小さなハチでかわいいものだ。
8月25日に写真を載せたものと同じかと思ったが、脛節と附節が薄い橙だし、大アゴも鋭いので違う種類だった。
こういうのが分かると、一寸目では区別の付かないのがゴロゴロしているのが昆虫なのだなと改めて思うのだ。
2016.09.20
ハエ違いだがヒラタアブの翅のつけ根がどうなっているかを調べてみた。
翅の構造材とも言える翅脈の内、特に強固な前縁脈と亜前縁脈が翅の動きで重要な働きをしていると思う。
この先端は、固い材料と柔らかいものと複雑に組み合わされている。(背板の一部と翅脈が透明でピンクに染色されているが、それ以外のピンク部分が柔らかい膜状のところだろう。)
背板とは二ヶ所で接続しているようだ。ここで上下の動きを直接受けるのだろう。そして、側板接続部との位置の違いが上下運動をはばたきに変えているのだろうが、そこまでは見分けられなかった。
前縁脈と鱗弁は筋肉が接続しているみたいで、いろいろな動きができるようだ。実際、翅を前に持ってきたり後ろに納めたりしなくてはいけないし、羽ばたく時も微妙な動きがハエの素晴らしい機敏さもたらしているのだろうから動きを制御する筋肉はどうしたって必要だ。そして、それら全ての動きを可能にしているのが、このつけ根の硬軟組み合わせた構造なのだろうかと思うと興奮してくるが確かめるのはたいへんだ。
2016.09.15
「昆虫の生態図鑑」から、翅はどのように動くかの模式図を載せたが、解説では
「昆虫が飛んでいる時の翅の動きは、たいへん複雑で、しかも、昆虫の種類によっても、ちがいます。それは胸と翅のつながりかたが、じっさいは、いまのべたことよりずっと複雑だからです。機械のすきな人だったら、昆虫の翅のつけ根がどうなっているかを、よく調べてみるとおもしろいでしょう。」
となっていて、自然界は簡単ではないことが述べてある。
それではと、解剖したものをスケッチしたのが上段の絵だが、これでは何が何だかサッパリなので色分けした。
翅の下に団扇みたいな2枚重ねの鱗弁というのがあってわかりにくい上に、側板も硬質と膜質部分があって、やけに複雑だねとなってお手上げ状態だ。
2016.09.10
ハエの胸部は筋肉で充ち満ちていて、飛行用の背腹の筋肉とたての筋肉は太く整然と並んでいる。
その2種類の筋肉を互い違いに収縮させて腹部振動し、それで翅が動くという仕組みだそうだ。
気門は前と後ろに2組ある。前にあるのが長く大きい。そしてここのところに背腹の筋肉がないので気嚢があるのかもしれない。潰れたのか確認できなかった。
筋肉に薄く汚れたような筋がかろうじて見えるが、これは膜状だが気管だと思う。激しい動きをするわけだから大量の酸素が必要だ。それにしては気管が少ないなと思われようが、本当は細かいピッチで整然と付いているのだがうまく残せなかったのだ。
食道、唾液腺、神経、血管と気管が首で頭とつながっているが、食道と神経だけがかろうじて分かった。針を潰したような自作のメスだが切れ味がもっと良くならないといけないし、切る位置とか順番もよく考えないといつまでたっても見分けられないで終わりそうだ。
2016.09.05
昆虫の体の中は図鑑など見ても実感が湧かないが、それではと解剖してみると図のように整然としているわけでもなく何が何だか分からなくなるものだ。
ハエの腹部前部は大きな気嚢が二つ並んでいるが、初めの頃は腹を開くときに潰してしまって空洞があるくらいにしか理解できなくて気嚢ということに気がつかない暢気さだった。
水中で解剖すると元の形が分かりやすいのに気がついて初めて気嚢がどんなものかはっきり眼にしたわけだ。
昆虫の呼吸は腹部と胸部の多数の気門からで、口からではないが、ハエなどは空気を溜め込む巨大な空間も確保しているわけだ。これから先は気管が網状に各器官に広がっていて空気のやりとりをしているわけだが、下の写真でも太目のものの一部が見えている。その先がだんだん細く複雑になっていくわけだ。
栄養分と排泄物はたっぷりの体液で循環させていると思っていたが、腹部は消化管と生殖器にこの気嚢でびっしり詰まっているし、胸はほとんど筋肉みたいだし、頭部も脳や口器に気嚢もあって隙間は少ないようだ。意外に少量の体液を効率よく使っているのかもしれない。
2016.08.30
フタフシアリ属のハマアシナガアリのようだ。体長0.6センチメートル。
真鶴半島の付け根は岩場に遊歩道があって夏はバーベキューなどで賑わっている。そこで捕まえた。細長くて頭と腹はやや黒いが胸は赤っぽい中型のアリだ。脚の長いアリだが海岸が生活の場で岩の隙間などで生活しているらしい。
前回、短い脚で穴を掘って生活しているのも肯ける。と書いたが地中生活者でも長い脚のアリもいるしで世界はひろい。いろいろだ。
ところで、このアリは右前脚は腿節の根元で、後脚は先端で切断されていた。図の手前側は三本の脚があるが、向側は矢印の一本しかない。傷口は古そうだったので、これでかなり生きてきているのだろう。よくこれで生き抜いてきたとじわっと来るものがあるが、絵の素材になったことで成仏してもらおう。
2016.08.25
コハナバチ科の一種みたいだが、花に飛んできて盛んに花粉を体につけ蜜も吸っているようだし、胸とか脚のフサフサした棘毛をみれば蜜蜂系はすぐ分かる。こいつは0.5センチくらいで小さいのだが、よく似た感じで1センチくらいのも良く来る。
蜜蜂=集団生活のイメージだったが、こいつらは地中に単独で営巣し花粉と蜜を蓄えその上に卵を産み付けるそうだ。
ズングリした体、短い脚、シャベルのような大アゴを見ると、確かに穴を掘って生活しているのも肯ける。
2016.08.20
最近のネットでは地形図と標高データを組み合わせて鳥瞰図を作ることも出来る。標高データは5メートルメッシュのもあるので驚くべき詳細さだ。しかも、断面図まで簡単にできるので立体図では読み取りにくい部分も理解しやすい。
図は大磯、二宮間で二宮に近いところだ。大磯丘陵南端の平地であるが、海抜10メートルぐらいはある。葛川が北から南下しているが、海岸線の15メートルほどの高まりで東へ向きを変えている。
Aは明治時代のものだが、標高は鉄道や住宅地で削られている現代のもので当時とは異なるのを頭に入れて見ないといけないが、東海道沿いに集落がある他は田や畑で葛川の南は荒れ地だったようだ。江戸時代もたいして変わらないどころか室町時代でも似たようなものかも知れない。などと思って眺めた。
しかし今は海岸線に沿って西湘バイパスが通り、葛川南の荒れ地はゴルフ場と大磯ロングビーチで大変な変わり様だ。
西湘バイパス、国道一号線はよく利用し、東海道線は毎日のように通って窓の景色はなじみ地形図も好きでよく見たが、この鳥瞰図を見るとなにも理解してなかったのがよく分かった。
なにごともそうなんだろうなとも思う。沢山情報に接して全体像を捕まえたように思ってるのだが、実はほんの一面だけしか見ていないのだ。
2016.08.15
9月第一週は都美術館で新作家展がある。その出品作だ。
ARK-01(干潟)のニッチア一本をF120の中央に置いただけというものは、手抜きの絵だと見る人がほとんどだろうなと思う。
それでもめげないで単純化に努めているわけで、立ち止まってユックリと見てくれる人がでてきますようにというのが今の望みだ。
2016.08.10
御浦風物誌にヒゲブトオサムシの標本画がたくさんでていた。ここ どれも似ていて一寸見では区別がつかない。じっと見て較べると些細な違いが見えてくる。それを重ねていくとだんだん違いが大きく見えてくると言う案配だ。
九州大学総合研究博物館のMさんからの依頼だそうだ。19種を一度に描くので、一枚ずつ仕上げたのでは初めと終わりでは仕上がりに差が出るため平行して描いたそうだ。名人のされることは毎度唸らせられます。
依頼主はイニシャルで紹介されていたが、「断虫亭日乗」というブログで論文完成の紹介がされていて、ここ すべての全形図を世界一の標本画家に依頼したとあった。丸山宗利研究室がリンクされていて、Mさんは丸山宗利教授だとわかる。
世界一の標本画家は、ほんとかどうか小生には判断する力はないが、そうだろうなとも思う。
それらの画に刺激をうけたわけでもないが、前回のハンミョウを形の正確さを第1にして鉛筆で描いた。写真からでなく実体顕微鏡を覗きながら直に描いたものだが、落ち着いて写真と比べると実体顕微鏡は右と左ではえらく違っているせいもあるのだが、正確に見ていないのがはっきり分かる突っ込みどころ満載の絵になってしまった。
2016.08.05
この間のハンミョウを標本化したので写真に撮り深度合成した。
動かないから深度合成できるわけだが、重なっている所など具合の悪いヶ所も多くて修正に手間取ったし、照明も後方からなので不満足な出来だが、なんとかそれらしく出来た。
ハンミョウは正面の獰猛な顔だよね。といつも思っているが、複眼の大きさとか大あごの形や大きさは、いかにもハンターだ。手掴みしたことはないので挟まれたことはないが、これに挟まれると相当な痛みだという話だ。
2016.07.30
MWSのACC_01(南極)に入っているアステロランプラ属と思われる珪藻。
MWSの元画像をリンクしないわけは、久しぶりに見直したところ小生の画像とあまりの違いにがっくり来てしまったからなのだ。簡単に比較されたらたまらんというケチな考えからなのだ。2009年3月の「本日の画像」にこいつの画像がでて、「研究者でも入手困難な、南極海の海底に沈んでいた珪藻をプレパラートにした。」と言うことだったのでさっそく求めて撮影した。
上はその時のもので、本家のようには撮れないのは当たり前としても、それに近づけようと工夫を凝らしたものだ。
どんな照明をしたか、さっぱり思い出せないが、平板なものが立体を感じるものに変わったのだけは確かだ。
下は最近ウェッブカメラで撮った物。まともなカメラと比較すると荒い画像で恐縮するが、裏の骨組みの様子が分かりやすいと思う。海底に沈んでいる間に壊れたのか、奇形か、判然としないが、上のような整然さがない。普通の人は好まない画像だろうが小生はこんなのに心引かれてしまうのだ。
2016.07.25
コウチュウ(鞘翅)目オサムシ上科ハンミョウ科コニワハンミョウかトウキョウヒメハンミョウかもしれない。体長1センチメートル。
ハンミョウはカラフルなものが有名だが、こいつは肉眼では焦げ茶色の地味なものだ。ところが実体顕微鏡下では、赤銅の鎧に、にぶく光る金や青がなかなかに美しい。
どんな生活をしているのか、さっぱり分からないが、6,7月頃我が家の周りにあらわれる。見つけても素早く飛び退き捕まえるのは難しいものだが、住み着いているようで逃しても日が改まると捕まえられたりして、いくつかは持っている。
スケッチしたのは6年前に捕まえたものだし、写真はついこの間捕まえたものだ。
2016.07.20
スズメバチやアシナガバチは飛んでないときは翅は棒のような感じで腹部の上にちょこんと納まっている。
前回の絵でそうなるか試してみた。
@の赤線が大体の中央に当たるから、ここで二つに折れればよいわけだ。
左翅は旨い具合に翅脈のところだったが、右翅は翅脈が二つに別れるところで赤線に当たってしまった。
こんなところが勘所で、ちゃんと理解してないことが露わになるわけだ。
ところで、大型のハチは下翅の前縁にある何本かの爪を上翅の後縁のめくれたところに引っかけて、一体化した翅で飛んでいるが、さらに降りるとコンパクトに畳んでいるのには、全く大したものだと感心させられるのだ。
2016.07.15
ハチ(膜翅)目細腰亜目スズメバチ科ヒメスズメバチ。体長3センチメートル。
御浦風物誌にキイロスズメバチの巨大巣をオオスズメバチの集団が襲撃中の体験記事が載っていた。ここ
スズメバチは意外にも返り討ちにあって、犠牲者は次々とその姉妹たちに噛み砕かれ、肉団子へと姿を変えて、出立した巣へと帰ってゆくのだそうだが、肉団子にしている写真が掲載されている。さすがに専門家のサイトだけあって、短文ではあるが情報量も多く密度の濃いものだ。
ところで、小生もスズメバチの標本を持っている。オオのつくのはなくて、ヒメとかモンとかしかつかないのは残念なのであるが。
2016.07.10
5月から始めた絵の完成だ。残滓と名付けた。
廃墟でもよかったかもしれない。
破壊された跡を現しているわけだ。
無残な気分が漂っているのが感じられるか、感じられないかが成否の分かれ目だろう。
それにはエネルギッシュに細かく細かくと描き込んでいくのはちと拙いかなと思えたので、じっくり見て筆の動きはすくなくした。
そのかわり何度も乾かしては塗り重ねる薄い絵の具の層が明暗と深みを生み出し、荒いタッチも離れて見るとリアルさを示してくる。
それが絵の力となって見る人になにかを感じさせる。
そうなっていると良いのだが。
はかない願望だ。